ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.552

はしご酒(4軒目) その百と百と九十三

「プラスチック ハ ゼンゼン プラスジャナイ」②

 「以前、ある学者が、目に見えるゴミを目に見えないようにする、みたいなことを話していた」、とAくん。

 それまで、いつまでもそのままの形状であったモノが、時間の経過とともに細かく分解されていき、やがては目に見えなくなる、という。

 「画期的な発想だし、発明じゃないですか」、と私。

 「その時は、僕も、そう思った」

 「その時は、とは、・・・」

 Aくんの、その、その時は。ナニやら妙に引っ掛かり、ドンドンと気になってくる。

 たとえば、砂浜などに打ち寄せられた無数のプラスチックゴミが、時間の経過の中で、自然に細かく分解されて目に見えないほどの小さな粒になる、という着想、発想、発明。どこからどう考えても画期的だと思うのだけれど、どうやらソコに、落とし穴が隠れていそうなモノ言いなのである。

 「見えなくなる、と、消えてなくなる、とは、全く違うもの、だということだ」、とAくん。

 全く違うもの、という、そのことが、Aくんが言うところの、目に見えないものの恐ろしさ、に、繋がるのだろうか。ズンズンとナゾめいてくる。

 するとAくん、「たとえば、化学繊維の衣服を洗濯した水の中に、目に見えないプラスチックみたいなモノが含まれているなんて、想像もしなかった」、と。

 洗濯一回分のその量は、超微々たるモノなのだろうけれど、何年も何年も世界中で洗濯し続けるうちに、目に見えないプラスチックは、海に、魚に、そして、やがては回り回って人間の口に、などということも、充分にあり得る、という。

 なるほど。ナゾに包まれたナゾめいていたモノのその正体が、ようやく、なんとなく見えてくる。

 そしてAくん、ズドンとトドメを刺す。

 「目に見える、目に見えない、に、かかわらず、プラスチックは、プラス、チックどころか、どこまでも、ひたすら、マイナス、マイナスチックだということだ」

(つづく)