はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と二十六
「カッテニソンタクサセチャウマン ウゴメク」
巷を賑わすパワハラ(power harassment)には、わかりやすい武闘派と、わかり辛い技巧派とがある、とAくん。
先ほども、たしか、わかりやすいパワハラ(オモテハラだった、かな)には、間違っても返り討ちに遭わないように、最大限に気を付けつつ、その陰で、コッソリと「評価」でトドメを刺す、みたいな、そんな、もう一方の必殺仕事人的なパワハラ、「ウ、ラ、ハ、ラ」、が、あるんだ、という話を、Aくんは語っていた。
「オモテハラ、と、ウラハラ、ですよね」
「そう、それそれ。でもね、この場合は、ウラハラも武闘派に属する」
「えっ、そ、そうなんですか」
「だって、評価でトドメを刺しているんだから、充分に武闘派だろ」
たしかに、その通りだ。
「じゃ、技巧派は、どんな手口で、その怪しげなパワハラを実行するのですか」
「ナニもしない」
「えっ」
「ナニも言わないし、ナニもしないんだよ。にもかかわらず、相手が、勝手に、忖度してくれる。コチラの思いのままに動いてくれる。コレだよ、コレ、技巧派の技巧派たる所以(ユエン)は」
おもわず鳥肌が立つ、立ちまくる。
「権力を握るシモジモじゃないズル賢いピーポーたちの世界が、よほど居心地がいいのだろうな。絶対に、自ら手を下すことなどないスライ(sly)なダークヒーロー、カッテニソンタクサセチャウマンたちは、今日も今日とて、ヘラヘラとほくそ笑みながら蠢(ウゴメ)いている、わけよ」
(つづく)