ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.795

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と二十六

「カッテニソンタクサセチャウマン ウゴメク」

 巷を賑わすパワハラ(power harassment)には、わかりやすい武闘派と、わかり辛い技巧派とがある、とAくん。

 わかりやすい武闘派と、わかり辛い技巧派?

 先ほど登場した、たしか、オモテハラ、ウラハラ、だったか、その、親戚筋かナニかだろうか。

 そう、オモテハラ、ウラハラ。オモテハラと、ウラハラだった。

 返り討ちに合いやすいオモテハラは封印し、その陰で、コッソリと、「評価」というウラハラで、必殺仕事人のようにトドメを刺す、みたいな、そんな話だったかと思う。

 「オモテハラ、と、ウラハラ、ですよね」

 「そう、それそれ。でもね、この場合は、ウラハラも武闘派に属する」

 「えっ、そ、そうなんですか」

 「だって、評価でトドメを刺しているんだから、充分に武闘派だろ」

 たしかに、その通りだ。

 「じゃ、技巧派は、どんな手口で、その怪しげなパワハラを実行するのですか」

 「ナニもしない」

 「えっ」

 「ナニも言わないし、ナニもしないんだよ。にもかかわらず、相手が、勝手に、忖度してくれる。コチラの思いのままに動いてくれる。コレだよ、コレ、技巧派の技巧派たる所以(ユエン)は」

 おもわず鳥肌が立つ、立ちまくる。

 「権力を握るシモジモじゃないズル賢いピーポーたちの世界が、よほど居心地がいいんだろうな。自ら手を下すことなど絶対にないスライ(sly)なダークヒーロー、カッテニソンタクサセチャウマンたちは、今日も今日とて、ヘラヘラと、ほくそ笑みながら蠢(ウゴメ)いている、わけよ。その、気持ちの悪い世界で」

(つづく)