ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.878

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と九

「タヨウセイガ リントシテ ソコニアルタメニ」①

 そんなAくんの熱唱を聴いているうちに、なんとなく、島国であるこの小国が、最も苦手とするワードの一つが「多様性」なのかもしれないな、と、思えてくる。

 では、その、最も苦手かもしれないワードである「多様性」が、凛(リン)としてソコにあるためには、いったい、ナニが必要なのだろう。その問いを、やたらとハイトーンで歌い上げて悦に入っているAくんに、ぶつけてみる。

 「その多様性が、凛としてソコにあるために、必要なモノって、ナンだと思いますか」

 「多様性、が、凛としてソコにあるために、かい」

 そう言い残して、Aくん、そのまま、恒例の沈黙タイムに入ってしまう。 

 それほど、この星において、多様性がソコに凛としてあることは、至難の業だということなのだろう。

 考えてみれば、人類が、この星に誕生して、もう気が遠くなるほどの年月が経っている、というのに、にもかかわらず人類は、人類として絶対に考えなければならない肝の部分、最重要課題を、どこまでも後ろ向きの硬直した思考ばかり、に、かまけて、ず~っと放置し続けてきたような気がする。

 哀れなり、先人たち。そして、現代を生きる、もちろん私も含めた、大人たち。一体全体、この星の、どんな未来を見てきたのか。そして、どんな未来を見ようとしているのか。

 そんなことをアレコレとタラタラ思ったりしていると、ようやく、Aくん、沈黙タイムに別れを告げて覚醒する。

 「ナニが必要か。の、その前に、ソコに凛としてあるために、ナニがあってはいけないのか」

 ナニが、あってはいけないのか?

 「ソレがソコにある限り、多様性なんて、絵に描いた餅。砂上の楼閣。ということだ」

 その、ソレとは、いったい。(つづく)