はしご酒(4軒目) その百と九十
「トナリノヒト ノ イキヅカイ」①
僕のような、ひとりでいる時間をこよなく愛するタイプでも、人と人との繋がりの大切さ、繋がる意味の深さ、みたいなものは、人一倍理解している、つもりではいる、とAくん。
「先ほどの、あの、怪しげな、あっ、すみません、あ、あの、味わいのある、アトリエで、ほぼ一日中、制作しているんですか」
「そう。あの、怪しげな、アトリエでね」
Aくんには申し訳ないけれど、あのアトリエ、あの建物、どこからどう見ても、やっぱり、滅法、怪しい。でも、どことなく、味わいがあるのもまた、事実。そんな怪しくて味わいのある空間で、一斉の煩(ワズラ)わしさから解放されつつ、ノンビリと作品づくりとはな~、いいよな~、などと、羨ましく思ったりする。しかしながら、その反対側には、そうした思いを打ち消すかのように、「私には、無理だな」、と、すぐさま諦めてしまう自分が、悲しいかな、ド~ンといたりもする。
するとAくん、ココまでの話の流れの完全無視を決め込んで、突如、新たな展開を見せる。
「オーケストラ、なんだよ、オーケストラ」
「オ、オーケストラ、が、どうかしたんですか」、と、そのコロッコロッと姿かたちを変化させるウルトラな展開に、どうにかして置いてけぼりを食らうまい、とする私。
オーケストラが、どうしたというのだろう。
またまた、妙な期待が、ブワブワブワンと膨らむ。(つづく)