ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.440

はしご酒(4軒目) その百と八十一

「イタシカタガナイトキ ノ イタシカタナシ ノ コウザイ」①

 「あれほど、こうあらねばならない、と、そうでなければ、大きな問題を生む、と、理想を追求してきたにもかかわらず、致し方なし、と、なし崩し的に妥協の道を辿り始めることは、たとえ、致し方がないときであろうとも、いかなる理由があろうとも、滅法、罪深い」、とAくん。

 たしかに、それはマズイだろ、と思われることも、致し方ない、と言われれば、致し方ないのだから致し方ないか、などと、たいして深く考えることもなく、なんとなく納得してしまう。

 「話は、大きくなるけれど、たとえば革命、それが市民革命であったとしても、ほとんどがそのあと、数々の問題点が噴出して空中分解、のように見えるんだな、僕には」

 なるほど、必要であったからこその革命も、あまりにも「破壊」の要素が強すぎて、おもわず「破綻」の扉を開けてしまう、ということなのかもしれない。

 致し方なしの、急激な変化を強いられた革命の、悲しい宿命と言えなくもない、のだけれど、そのまたもう一方で、もう一つの思いもまた、プクリと頭の中に湧き起こったものだから、そのままAくんに告げてみる。

 「でも、平時では、つまらない大人の事情やら都合やらナンやらで、どうしても踏み出せなかった、踏み出すべきその一歩が、トンでもないナニかが起こったことで、致し方なく、やっと踏み出せた、みたいなことも、あるんじゃないですか」

 するとAくん、これは一本とられたな、みたいな、少なくともそう見えた、そんな表情をチラリと見せつつ、ぐい呑みの、その底に僅かに残った酒を、グビリと呑み干す。(つづく)