はしご酒(4軒目) その百と八十
「ヨウカイ アマクダリ ト アク ト トウメイ デ コウセイ」
絶大な生命力を誇る「アマクダリ」。本格的に駆除に乗り出す、なんてニュースを、耳にしたこともあるけれど、まさにウィンウィンの関係ゆえに、わからないように、駆除用の薬剤に大量の水でも混ぜていたのだろうか、駆除されるどころか、今も、ナニかと美味しそうなところを見つけては、チョロチョロと、実に活動的だ。
この国には、この星には、人々の心を惑わしまくる悪魔やら妖怪やらが、ゴマンと生息している。とくにこの国の、シモジモじゃないエライ人たちの心の中に棲み着きやすいという特性をもつ、と、言われている妖怪「アマクダリ」の、この実にネチッこい生命力は、そんじょそこらの薬剤ごときでは、水など混ぜるまでもなく、ビクともしないのである、と、私は、以前から強く思っている。
そんな私のナンともカンともな思いを、タラタラとAくんに話してみる。
「ほ~アマクダリ(天下り)か~、権力と金とをグツグツと煮込んで、仕上げに、忖度やら姑息やらというスパイスを、パラパラッと、という、そんなイメージだな」
「ものすごいイメージですね」
「しかも、煮込んでいる途中で、ブチュブチュと浮き上がってくる灰汁(アク)を、よほど、その味の邪魔になるのか、徹底的に、丁寧に、丁寧に、取って取って取りまくる」
灰汁を丁寧に取りまくる、か~。
もちろん、この社会の「必要悪」という一面もまた、しぶとく、あり続けているわけだから、そんなアマクダリでも、それなりに、いい仕事もしているんだよ、ということを、本意ではないながらも、Aくんは、事実は事実として、私に、キチンと、伝えようとしているのだろうか。
「さすがのアマクダリも、必要悪としてのソレなりの面子(メンツ)やら誇りやらにかけても、社会のためにコツコツと、丁寧な仕事もしています、ってことですね」
するとAくんは、これ以上ない、というぐらいの、不敵な笑みを浮かべたあと、その衝撃の真相について、ユルリと静かに語り出す。
「徹底的に取り除かれ、捨てられようとしている、その灰汁を、あらためてジックリと凝視してみる。すると、・・・、その灰汁の、その脇腹に、ハッキリと書かれているわけさ、透明で公正、透明、で、公正、とね」
わっ。
肝心要の、透明、とか、公正、とか、が、灰汁として、綺麗サッパリ取り除かれて捨てられて、ソコに残ったモノは・・・。
(つづく)