ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.337

はしご酒(4軒目) その八十八

「センニュウカン トイウ アクマ」①

 子どもたちの内なるものを、どれだけ理解できるか、が、学校の先生に問われていること、だと思う、と、あいかわらずの唐突さで語り始めたAくん。

 そう簡単には見えそうにない子どもたちの内なるものを、理解することのその難しさは、学校の先生ではない私でも、容易に想像できる。それゆえに、言うは易く行うは難し、ということなのだろう。

 「ただ一つ、ちょっと厄介なことがあるんだよな~」

 理解することだけでも、充分すぎるほど厄介だと思うのに、さらに、ただ一つ、と、付け加える、その、ただ一つ、とは、一体全体、なんなのだろう。プクリと好奇心の泡が浮き上がる。

 「なにが厄介なんですか」、と思い切ってストレートに聞いてみる。

 するとAくんは、同じ蔵元の沖縄の本醸造酒もありますよ、という、女将さんの言葉に心を動かされたのだろう、条件反射のように、「じゃ、ちょっとだけ燗してもらって、41℃ぐらいで、いや、42℃かな」などと、やたらと細かく注文をつけている。

 きっと聞こえなかったのだろうと、さらに思い切って、もう一度、同じ質問を試みる。

 聞こえているよ、と、まるで愛想がないAくん。

 だからといって、じゃ、すぐに返事してくださいよ、と、言ってしまったりしないところが、私の人徳のなせる技、というか、気が弱い、というか、などとウダウダ考えたりしているうちに、その「ただ一つの、ちょっと厄介なこと」の、そのナゾを、ユルリと解き明かし出したAくんなのである。(つづく)