ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.803

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と三十四

オーウェン、オウエン」

 ナニがナンでも労働者を応援。

 それが、私が抱いている「ロバート・オーウェン」のイメージ。

 そのイメージ以外は、彼のコトなどナニも知らない。のだけれど、彼の、悪しき環境が労働者一人ひとりに致命的な影響を与える、という考え方には、それなりに、どころか、かなり、共感できる。

 「ロバート・オーウェン。空想的であろうがなかろうが、社会の闇に切り込むその姿勢には、共感できるものがある、と、勝手に思っているのですが」

 「空想的社会主義者のロバート・オーウェンね」

 「はい、そのロバート・オーウェンです」

 「申し訳ないが、学校でチョロッと学んだぐらいで、ほとんどナニも知らないな」

 「私も同じようなものです。彼のことなどナニも知らない。でも、ナニがナンでも弱き労働者を応援するその姿勢が、好きなんです」

 「おっ。まさかの、オーウェン、からの、応援、かい?」

 残念ながら、即座に、「ソレは違います」と胸を張って全否定することができない私は、妙に膨らむ照れのようなモノを掻き消すように、一気に、饒舌に、喋りまくる。

 「た、たまたまです。と、とにかく、働いても働いても生活がママならない、そんな、追い詰められた労働者に対して、いとも簡単に、負け組、負け犬、自業自得、自己責任、などという烙印を、躊躇なくペタンペタンと押したがりがちな、そんな世間の風潮に比べれば、オーウェンのその、ブレない、ナニがナンでも『応援』、という姿勢は、やっぱり、いいと思うのです」

 「たしかに世間は、どういうわけか知らないけれど、どこまでも弱き者に厳しくて、いつだって自己責任自己責任と、うるさいうるさい」

 たしかに、いつだって自己責任、と、うるさいうるさい。

 公平公正の「キミダイラ キミマサ」くんが生き辛いように、悲しいかな、悪しき環境に追い詰められた弱き労働者たちもまた、ホントに生き辛い国なのかもしれないな、この国は。

 そんなことを思ったりしているうちに、もう、どうしようもないかも、などと、ナニやら絶望的な気持ちになっていく。

 するとAくん、「彼のことなんかナニも知らないんだけど、どこかで耳にした彼のこの言葉だけは覚えている」、と。

 ん?

 「諦(アキラ)めは愚か者の結論」

 んん?

 「諦めは愚か者の結論、とは、いや~、ロバート・オーウェンくん、正論で、実に厳しいトコロを突いてくれるよな~」

 諦めは愚か者の結論、か~。

 さすが、ロバート・オーウェン。たしかに、厳しいトコロを突いてくる。でも、その通りだ、諦めてはいけない、ナニがナンでも絶対に、諦めてはいけない。と、どうにかギリギリのところで踏み止まって、辛うじて、自分自身に言い聞かるように、ズシリと思う。(つづく)