ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.356

はしご酒(4軒目) その百と七

「エイダン!」

 「英断」という言葉の意味をご存知か、とAくん。

 「トップが下す、ここ一番の決断みたいなものですか」、と、「因縁」のときのナニも返せなかった不覚を巻き返す勢いで、今回は即答してみせる。

 「おっ、いいとこ突いてくるよな~」

 もちろん、いいとこは突いてくるけれど、正解ではないよ、ということが、ピンと察しがついてしまったものだから、あまり喜べない。

 ここ一番というとき、全知全能と勇気とを集結させて下した決断に対しての、評価なんじゃないか、とAくん。

 「評価、ですか」

 「そう、評価。全てが終わったあと、その決断がどうであったか、という評価。その評価の中のS評価が、英断」

 ふと、Aくんらしくないな、と思ったので、少し強気に問い返してみる。

 「いつもは、評価、というものに否定的じゃないですか。なぜ、そんな英断の話なんてするのですか」

 んっ、きたな、みたいな、そんな不敵な笑みを、微かに浮かべたAくんは、またまた一段階、さらにスピードを落として、ユルリユルリと語り出したのである。

 「その決断が、素晴らしかったかどうか、英断であったかどうか、の、その評価を行う者が、誰あろう、我々、シモジモであるエラクナイ一般ピーポーなんだ、と、僕は思っている。同じ評価でも、そのあたりのエラそうなモンスターヒョーカーたちによるエセ評価とは、完全に一線を画している、ということだ」

 なるほど、と、おもわず納得してしまう。

 我々一人ひとりが、そうしたシモジモじゃないエライ人たちの決断が、愚断であったのか、それとも英断であったのか、を、検証し、評価するときが、必ずやってくる。そのとき、いろいろあったけれど、あのときのあの決断は、英断であったな~、と、とびっきりのS評価なジャッジを、することができればいいのだけれど、と、心から思う。

 言わずもがな、Aくんは、大いに懐疑的であるようだが。(つづく)