ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.352

はしご酒(4軒目) その百と三

「エコダ!」

 西武池袋線にある「江古田」という駅で下車し、プラプラと歩いて5分ぐらいのところに、ほんの少しだけ住んでいたことがある、と、途方もないほどの唐突さで、Aくん。とくに、これといった思い出があるわけではないらしいのだけれど、なにやら、ただ一つ、とてつもなく低価格なラーメン屋さんがあった、ということだけは、それなりにハッキリと覚えている、と言う。

 アッサリとした醤油ラーメンにチャーハンを付けても、200円ぐらいじゃなかったかな~、などと、つい先ほどまでの厳しい表情を、どこかに置き忘れてきたような、そんな柔(ニコ)やかさを振り撒きながら、懐かしそうに振り返るAくん。それほどのステキが詰まった、江古田のラーメン屋さんであったのだろう。

 「江古田は、この国の環境保全、いわゆる、エコロジー、エコ、の、拠点としても注目されている駅なんだよな」、とAくん。

 「えっ!、その200円もスゴいですけど、それ以上に、スゴい駅じゃないですか」

 「元々は違う駅名であったのだけれど、エコの拠点として世界に発信するために、エコだ、江古田、ってことにしたらしいよ」

 この国も、随分と昔から、エコに目覚めていたんだな~、などと、久々に、ちょっとした感動すら覚える。

 「って、あの大阪弁のヤツに、騙されたんだ!、そんなわけありまへんや~ん、なんて言われて、ムカつくよな~」

 げっ。

 おそらく、そのときのAくんの3倍ぐらいのムカつきが、一瞬にして私の体内を、駆け巡ったと思う。(つづく)