はしご酒(4軒目) その八十九
「センニュウカン トイウ アクマ」②
「たいていの学校の先生は、まず、子どもたちを理解しようとする。これは間違いないと思う。厄介なのは、そのあとなんだな」
「そのあと、ですか」
「そう、そのあと。理解しようとするその気持ちは、そのあともズ~っと継続されていくべきなのに、忙しさにかまけてなのか、どうなのかは、僕にはわからないけれど、最初のその理解が、固定化されてしまう傾向がある、わけ」
「固定化、ですか」
「そう、固定化。それが、先入観となり、逆に、その子どもの内なるものが、その変化が、見えなくなる、という、悲劇だな」
「先入観、ですか」
「そう、先入観。先入観という悪魔が、学校の先生の五感を喰い散らかす、という、そんなイメージだな」
そのタイミングで女将さんが、黒っぽい木製のお猪口に注ぎ入れた沖縄の本醸造酒のぬる燗を、チビリと口に含んだAくん、「旨いな、これ。まさに、待ちに待った沖縄の春、到来、という感じ」、と、かなり絶賛の様子。
どんな感じなのだ、と、突っ込みたくもなるけれど、Aくんの、この沖縄の日本酒に対する絶賛もまた、先入観をもたずに対面したからこその「絶賛」なのだろうな、などと、思ったりしながら、その満足げな横顔を、ボンヤリと眺める。(つづく)