ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.332

はしご酒(4軒目) その八十三

「リョウヤク ハ クチニニガシ トハ カギラナイ」②

 「良薬は口に苦し、ってヤツだな」、とAくん。

 なるほど、苦く、(場合によっては)痛く、感じられるモノやらコトやらの中には、身体に、心に、随分といいものがある、ってことぐらいなら、なんとなく、今までの体験として、わかるような気はする。 

 「しかしながら、必ずしも、良薬は口に苦し、とは限らない、わけだから、良薬は口に苦し、で、いいと思う」、と、なんとなく意味深なAくん。

 「その、で、いいと思う、って、どういう意味ですか」、と私。

 「全てが全て、身体にも、心にも、さらには、この国にも、この星にも、いいモノやらコトやらってわけじゃないだろうから、となると、苦いものは苦いままでいい、という、そういうことだな」、というAくんの説明なのだけれど、やはり、わかり辛い。

 「心身にとどまらず、この国にも、この星にも、悪いものかもしれない苦いナニかが、苦いままでないときがある、ってことですか」、と、とりあえず問うてみる。

 「そう、そういうこと。劇薬は口に甘し。実は、劇薬の臭いがプスンプスンと漂い出そうとしているにもかかわらず、あの手この手で良薬のような、そんな佇まいに仕立て上げられ、そして、ごまかし切られてしまいそうになる、ということが、いかんせんこの世には、あったりするからな~」

 ひょっとすると、噂のデータ改ざんとか、トップシークレットの隠蔽工作とか、あるいは、やたらとプラス面だけを強調する説明会とか、といった巷を賑わしているウルトラCの数々が、Aくんが宣うところの「良薬は口に苦し、とは限らない」理論、の、非常にわかりやすい好(?)例、と、言えなくもない、のかもしれない。(つづく)