はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と百と六十二
「ジャクシャ ノ ケイショウ ナンゾ ムシシテ ダイジョウブ」
「ほら、先日、凄まじい判決があったろ」
ん?
「そ、そんなモノがあったのですか」
「あった、あった。国策に反するモノは、ソレが極めて重要な警鐘であったとしても、無視して大丈夫、という判決」
え?
「仮に、その警鐘が現実のモノとなって、トンでもないコトになってしまったとしてもだ、その警鐘を無視したコト自体が罪に問われるコトはない。という判決が、つい先日、高裁で言い渡されたんだよな」
そう語るAくんのその表情は、さすがに重い。
無視しても、大丈夫、とは、いったい・・・。
「予見可能性と結果回避可能性」
よ、予見可能性と、結果、回避、可能性?
あっ、ア、アレか~、あのコトだな、きっと。
「この二つを認識するための情報はなかった、って、こと」
「で、でも、かなり前から警鐘を鳴らしていた学者は、いたわけですよね」
「いたわけだけれど、弱小学者ふぜいが鳴らした警鐘やら予見やら、なんぞ、単なる『戯言(タワゴト)』に過ぎず、そんなモノに耳を傾ける必要なし。というわけだ」
う、うわ~。
「今回の判決は、今後に向けて、そのお墨付きをいただいた、ってことになる」
ん~、コ、コレか。
コレが、先ほどのあのコトだな、きっと。
Aくんが言うところの、あの、「ナニゴトにもビクともしない公正な裁判、なんて、古今東西、人間ごときでは、そう簡単にできるもんじゃない」って、ヤツの、その意味が、一気にわかったような気がする。(つづく)