ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.331

はしご酒(4軒目) その八十二

「リョウヤク ハ クチニニガシ トハ  カギラナイ」①

 沖縄の純米吟醸酒のアテに、と、この季節に?、という驚きなど、ものともせずに眼前に現れたゴーヤの酢醤油漬けを、にこやかに頬張りながら、Aくんが、あるお母さんの、あるプチ嘆き、を、ユルリと語り始める。

 「うちの子が、苦いものとか酸っぱいものとか、食べてくれないのよね~、と、嘆くわけよ、そのお母さんが。その、うちの子が、なん才ぐらいのうちの子なのかで、話はかわってきそうだけれど、そもそも、苦いものとか、酸っぱいものとか、って、初対面から、はじめまして、君って美味しそうだね、などということには、絶対にならないような気が、するんだよな~、僕は」

 そういえば、以前、誰かが、こんなことを話していたことを思い出す。

 苦いものは毒、酸っぱいものは腐ったもの。

 となると、ダンダンと味覚そのものが大人な味覚になる中で、「苦いものとか、酸っぱいものとかって、身体にいいんだよ」、などと言われたりもしているうちに、なんとなく、「美味しいね~、これ」、なんてことにジワジワとなってくる、ということなのだろうか。

 なんにせよ、両者とも、そんな感じのちょっとしたマニアック系味覚であることだけは、間違いなさそうだ。(つづく)