ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.327

はしご酒(4軒目) その七十八

アコーディオン ノ コウチョウセンセイ」

 なぜだろう。ふと、数十年も前のある記憶が、短編映画のように蘇る。

 運動場。

 快晴の中の全校朝礼。

 多くの子どもたちに混ざって列をつくっている私の姿は、小学生低学年といったところだろうか。

 子どもたちの何本もの列の前には、ポツンと古びた朝礼台。

 その朝礼台に、真っ赤なアコーディオンを抱えた校長先生が立つ。

 早々に話し始められた講話は、見事なまでにサクッと終わり、いよいよメインイベントに突入する。

 自慢のアコーディオンによるその日のテーマソングが奏でられ、おおらかに歌い上げられる校長先生のどこまでも明るい声が、校庭の隅々まで響き渡る。

 まだまだ幼き私ではあったけれど、その校長先生の全校朝礼は、平和というものを、なんとなく全身で感じ取ることができた、ちょっとした至福のひとときであったのだ。もちろん、誰にも告白などしたことはないけれど、ホントに大好きな校長先生であったのである。

 しかしながら、後にも先にも、そんな、個性溢れる素敵な校長先生、彼の他に、お目にかかることも、耳にすることもないまま、現在に至っている。

 なぜなんだろう。

 これもまた、Aくんが宣うところの「ワンカラー」ということなのだろうか。

 ワンカラーでなければならない、などということが、仮に、本当にあるとするならば、一抹の寂しさを軽く飛び越えて、絶望的な気持ちにさえなる。(つづく)