ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.288

はしご酒(4軒目) その三十九

「ハカナゲ トイウ カンジ ガ スキ」③

 たしかに、どれもこれも、見事なまでに、はかなげである。

 その真偽のほどは定かではないけれど、昔から美人薄命なんて言われたりしているし、髪の毛だって、気にされている人にとっては、切実な大問題だったりする。

 そんなこんななことをあれこれ考えているうちに、それでもやっぱりこの中で、一番切ない「はかなげ」は、「夢」しかないだろう、ということで、よし、と、左端の「儚げ」に、私の人差し指の腹を押し当てる。

 「そう、その通り、さすがだね、お見事!」

 想定外の賛辞に、面喰らい、少々恥ずかしくなりつつも、Aくんには申し訳ないのだけれど、なぜこんな切ない漢字が好きなんだろう、という疑問が、勢いよく膨らみだす。

 「なぜ、こんな切ない漢字が好きなんですか?」

 するとAくんは、一層ニンマリとしながら、こう答えたのである。

 「はかなげだから、だからこそ、どこかにフッと消え入って、無くなってしまわないように、人は、その夢の実現に向けて、覚悟を決めて、本気で臨み、挑むのだ、と、思うんだよな~」

(つづく)