ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.266

はしご酒(4軒目) その十七

「シンコキュウ ノ ススメ」

 恒例の唐突感満載で繰り広げられるAくんワールドに期待が膨らむ。その膨らみついでに、ある一本の映画のことを思い出す。

 Aくんオススメのその映画は、沖縄のさとうきび畑を舞台にした篠原哲雄監督の『深呼吸の必要』、21世紀に入って間もない頃の作品である。私としては、Aくんほどのオススメ感はないものの、ただ、「深呼吸」というワードだけは、なぜだか、なんとなく、頭の内側にベチャッとへばりついていた。

 この深呼吸、バタバタした際に心を落ち着かせるツールとして、それなりに古くから定着しているとは思うが、その効能に対しては、ウソとまでは言わないまでも、一種の伝統的オマジナイ程度の認識であった。

 ところが、どうやら深呼吸の通り道のその途中に、自律神経をいい感じにするスイッチみたいなものがあることが、わかってきたらしい。そのスイッチを鼻から吸い込んだ空気の圧が押してくれる、というのだ。

 科学的に、とか、医学的に、とか、といった上から目線の解明に、あまり好意的ではない私ではあるけれど、そのように科学的に裏付けられた先人たちの知恵には、やはり、感動すら覚える。ホントに凄いことだと思う。

 Aくん直伝の「ちょっとダークな相互嫉妬のススメ」もいいけれど、不覚にも、心が弱ったり痛んだりしてしまったときの「深呼吸のススメ」もまた、なかなかのオススメなのである。(つづく)