ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.256

はしご酒(4軒目) その七

「ナゾガナゾヨブナゾナゾエークン」②

 学校の先生は辞めた。

 えっ、という驚きと、やっぱり、という納得と、なぜ、という疑問と、大丈夫かな、という心配と、が、高速でグチャグチャッと駆け巡る。

 なにをどう言えばいいのか、よくわからないまま私は、「なにかあったのですか」と問うていた。

 「とくにはないけれど、ま、年も年だし、この年になって、研修に行けとか言われるし」

 「失礼ですけど、もうかなりのベテランですよね、それでもまだ研修なんですか」

 「もちろん、必要な研修も感動的な研修も、あったりするからな~、一概には言えないけども、そこに意味を見いだせない無理くり研修、とやらには、やっぱり抵抗がある」 

 「意味がないと思う研修なんかに行かなきゃいいじゃないですか」

 「おっしゃるとおり」

 「なにも辞めてしまわなくても」

 「なんか教員免許が失効してしまうらしいし、ちょっと面倒臭くなったかな」

 「失効してしまうんですか」

 「そう」

 Aくんほどのベテランでも、研修に行かないということだけで、教員免許が失効してしまうらしい、という、そのシステムの奇々怪々さに、おもわず絶句してしまう。

 (絶対に、するわけないだろうけれど)Aくんが講師として、若い先生たちに教育のなんたるかを語る、というものならば、まだどうにか理解もできそうではある。しかしながら、現実はそうではないようで、この国のシモジモじゃないエライ人たちの学校の先生に対する不信感を、とくにベテランの先生に対する敬意のなさを、痛感せざるを得ない。

 「体力的にも自信がなくなりかけてはいたから、潮時かな」

 「潮時って・・・、そんなシステム、全く知らなかった」

 「君は、教員免許、ある?」

 「はい、とりあえず、かなり無理して取りましたけど」

 「おそらく、もう失効していると思うよ」

 「えっ!?」

(つづく)