ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.784

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と十五

「ムヨウノスケ?」②

 点火と同時に、フワッっと目の前が温かくなる。

 だから、というわけではないけれど、その温かさで氷が溶けるがごとく喋り出している、私。

 「無意味だと侮(アナド)ることなかれ、無意味もまた有意味である場合もある、ということですよね」

 聞こえなかったのか、ナニも言わずにAくんは、赤色のポリタンクと共に奥へと姿を消す。

 聞こえなかったのだろうと思い、3割増しほどにボリュームアップして、同じことをもう一度、宣ってみせる。

 「聞こえているよ」

 わっ。

 またまた驚いてしまう。

 クールに、というか、冷たく、そう言いながら舞い戻ってきたAくんは、さらに、クールに、というか、冷たく、「少し違うと思う」、と。

 えっ。

 さらにさらに驚いてしまう。

 「無意味も有意味であるかもしれない、ではなくて、無意味は無意味としてソコにあるからこそ意味があるんじゃないか、ということ」

 一気に頭の中が、コンガラがってくる。

 「無意味は、意味がないからこそ、いいんだ。ということですか」

 「そう。無用ノ介も、無用だから、いい」

 なるほど、たしかに、「有用ノ介」では様(サマ)にはならないな、などと、バカなことを思いつつ、妙に納得したりする。

 「上から目線の」

 んっ?

 「上から目線の、怪しげな誰かによって二分された無用と有用など、それ自体にナンの意味もない、ということだ」

 Aくんが言うように、ナンの権利があって、エラそうに決め付ける、と、感じることは、たしかにある。そういえば、ある、シモジモである善人たちに対して、「生産性が低い」などと、スマした顔をして宣っていたシモジモじゃないエラそうな人もいたりしたことを、苦い憤りを伴って思い出す。

 俄然、無意味でいい。無用でいい。と、思えてくる。

 ココは、大いなる敬意と、ほんの少しの反省も込めて、無用ノ介に、乾杯! (つづく)