ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.255

はしご酒(4軒目) その六

「ナゾガナゾヨブナゾナゾエークン」①

 それはそれとして、しつこいにもほどがある、と、ツッコミを入れられそうだけれど、全ての謎が解明したわけではなく、いま一度勇気を振り絞り、「で、その元芝居小屋で、こんなに遅くまで、一体全体なにをされていたのですか?」、と、それまでよりは少しだけ丁寧に問う。

 これ、オバケ、鯨の尾っぽの羽根の毛、ぜんぜん羽根の毛じゃないけど、とにかく、ここのはいつ食べても美味いんだよな~、と、口に運ぶAくんを見て、はじめて、先ほど私がつまんだものが、なんであったのか、が、判明する。

 お通しが目の前に置かれたときのあの穏やかな酢の香りの正体がコレだったのか~、その爽やかな酢味噌とビラビラしたオバケなるものとの相性もまた素晴らしいな~、などと、エセ評論家気取りで(もちろん、心の中で)独りごちていると、ついに、Aくんが、その核心の扉を開く。

 「学校の先生をしている、なんて、言ったこと、なかったよな」、とAくん。

 そう言われて、ハッとする。そうなのだ、そうなのである。なにも知らない、知らないからこそのAくんなのだ、と、我に返った私は、なんてヤボなことを、いま問うているのだろう、と気づく。

 「すみません、もういいです、つまんない質問して、忘れてください」、と、慌てて全面撤回する。

 まあまあそう言わずに、今夜は妙に自分のことを語りたい気分なんだから、と、優しく微笑むAくん。

 そのあまりに意外なAくんの言葉に、驚きつつも、なんとなくホッとした私は、グラスに注がれたビールの残りを、一気に呑み干し、「あれからのAくん物語」の幕が上がるのを、グッと構えて待つ。(つづく)