ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1210

はしご酒(Aくんのアトリエ) その六百と四十一

「セイジ ト アクジ」

 「セイジは、セイジ」

 ん?

 いつもながらの意味不明の唐突感。

 「プロレスが坂口征二なら、ラグビー平尾誠二。と、なると、呑み鉄は六角精児だし、当然、指揮者は小澤征爾だ」

 その、あまりの見事さに感服至極。意味も意図も全くもって、不明。

 「アクジではなくて、セイジ。アクジであってはダメなんだ、セイジは」

 そりゃそうだ。

 坂口悪二では、平尾悪二では、六角悪児では、もちろん、小澤悪爾では、マジでサマにならない。

 でも、ソレが、いったい、どうしたというのだろう。

 「とある知人が、とある居酒屋で、思いっ切り酔いの力も借りて、恥ずかしくなるほどの大声で力説し始めたわけよ。『政治は正治。ナニがナンでも悪治であってはダメなんだ』ってね」

 セイジ、アクジ、で、あってはダメ?

 あっ、あ~。

 「正」ね、正。なるほど、正事、正治、か~。

 一気に、モヤッとしていた目の前がパッと明るくなる。

 「彼が言うには、シモジモじゃないおエライ人たちは、肝心要のそのド真ん中を完全に忘れてしまっている、と、いうコトであるらしい」

 「肝心要のド真ん中、ですか」

 「そう、肝心要のド真ん中」

 「ソレが、政治は正治、ですね」

 「そう、政治は、正治。大きな権力を握っているんだ。たしかに、そうでなきゃ、あまりにも罪深すぎるだろ。違うかい」

 微塵も、違わない。

 「その、政治は正治だというウルトラ当たり前のコトさえも、いともアッサリと忘れてしまえるあの人たちって、いったい、ナンなのでしょうね」

 「ナンなのでしょうな~」

 そう吐き捨てるように漏らしたAくん、心を一旦落ち着かせるように大きく深呼吸をしたかと思うと、すぐさま、ピンク色のお猪口の中でスッカリ生温くなってしまった新潟のコシヒカリをグビリと呑み干し、そして、ササッとテーブルの上を片付けて、またまた、奥へと姿を消してしまった。

 しかし、ナゼ、忘れてしまえるのだろう、マジで不思議だ。あまりに不思議過ぎる。ひょっとすると、あの人たちが大好きな「権力」には、その肝心要のド真ん中を忘却の彼方へ消し去るだけのダークなパワーが、満ち満ちているのかもしれないな。

 本来は、夢物語だとコケにされようが、悲観論者と揶揄されようが、ケツの青い理想主義者だとハナで笑われようが、この国の、いや、この星の、あらゆる全てのピーポーたちのために、正しきコトを、真実を、訴える、追い求める、コトが、心底、大切であるはず。にもかかわらず、いつのまにか政治家は悪治家に成り果ててしまった、と、その時、そのAくんの知人は、思いっ切り愚痴ってみたくなったのだろう。

 愚痴りたくもなるその気持ち、わかる、わかるな~。

(つづく)