はしご酒(Aくんのアトリエ) その五百と四十八
「フード ハ フウド」
「その土地で食べる、呑む。だから、なんか旨い、旨いんだよな~」
ん?
「テ、テロワール、ですか」
「そう、空気が、水が、土が、人が、その土地のフードをつくる」
「だから、その土地で食べる、呑む、美味い。つまり、ホップ、ステップ、ジャンプ。みたいなコトに」
「なる、なりまくる」
Aくんの、そんな、「フードは、やっぱりテロワール」理論に耳を傾けているうちに、この頃ほとんど耳にしなくなった「地方創生」という言葉が頭をよぎる。すでに、もう、あの人たちにとって、地方は、「選挙の地」以外のナニモノでもないのかもしれない。だから、選挙に、票の獲得に、有利になるようなコトにしか興味を示さない。真剣に、地方の未来を考えようなんて、まず、しない。と、しか、どうしても思えないのである。
「僕はね、大都会に、大都会のために、地方という地方からフードというフードを掻き集めるコト自体、引っ掛かりまくっている」
「フードの中央集権化、ですよね」
「そう、そういうこと。すでに、人間が先行して中央に集中してしまっているわけだから、当然のごとく、そんな人間たちを追いかけてフードも中央に集中するのもまた致し方がない、と、いうコトになるのだろうけれど、長い目で見てみろよ、良くないだろ、そんなの」
良くない。
ますます地方が萎む。
「フードは風土。風の土ね。風土まで大都会に持ってはこれないだろ。ナンでもカンでも中央集権化。真ん中に集めりゃソレでいいってもんじゃ、ない。と、いうことだ」
フードは風土、か~。
「だから、だからこそ、あえて、あえてもう一度言わせてもらおう。その土地で食べる、呑む。だから、なんか旨いんだ!」
(つづく)