ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.862

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と九十三

「チイキノ レキシ ブンカ フウド ソシテ ヒト」

 「正真正銘の自然災害、に、よるモノを除けば、この星の悲劇のほとんどは、それぞれの地域の歴史、文化、風土、を、軽んじる者が、ふとした弾みで強烈な権力者になってしまったことによって引き起こされたモノであるような気がしてならないんだよな~」、と、ナニやらヤタラと回りくどく語り始めた、Aくん。「侵略やら粛清やら民族浄化やらといったモノが、いかに、それぞれにとっての大切なモノを奪い、消し去っていったか。ほんの少し、ジャブ程度に考えてみただけでも、空恐ろしくなる」、と、ソコに、ズシッと重く言い添える。

 そう言えば。

 随分と昔のことだが、ふと、私の高校の世界史の先生が、授業で話されていたことを、思い出す。

 「アレキサンダー大王は、支配した地域の文化、宗教、言語、といったモノを尊重した」

 みたいな、そんな内容だったかと思う。

 もちろん、圧倒的な力にモノを言わせて支配しまくっていったのだから、けっして誉められたものじゃないのだけれど、当時の他の支配者たちとは、明らかにナニかが違っていた、ということだけは間違いないようだ。とは言え、直接、アレキサンダー大王本人に聞いたわけでもナンでもないので、その真相も、真意も、全くもってわからないのだけれど。

 曖昧ながらも、そんな、遠い昔のコトを思い出していると、Aくん、「地域の歴史、文化、風土、そして、人。コレらこそが地域のアイデンティティ。そうしたアイデンティティを思いっ切り軽んじる、軽んじることができる、からこそ、いとも簡単に、オキテ破りの『破壊』という道を選んでしまうのだろう。そうは思わないかい」、と。

 オキテ破りの、破壊、か~。

 おっしゃる通りである。そっくりそのまま、私もそう思う。古今東西、この星のそこかしこに目をやれば、自ずと、そう思わないわけには、到底、いかなくなる。

 あらためて、あらためて、強烈な権力者が愚かなる道を誤って選んでしまった時のその罪の甚大さを、ズッシリと重く、そして、ヒリヒリと、痛いぐらい感じるのである。(つづく)