ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.812

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と四十三

「ホップ スモールステップ ジャ~ンプ!」④

 「とは言っても、やっぱり現場には厳しい風が吹く。追い風ならまだしも、総じて、無慈悲な向かい風だ。そんな向かい風に、しばしば、スモールステップは吹き飛ばされそうになる」

 養護学校といえども、スモールステップは容易ではない、ということなのだろうか。

 「ジャンプのタイミングが、無理くり強要されてしまう」

 ジャンプのタイミングが強要されてしまう?

 「もっと、もっと力を溜めたいのに、そうしなければ本人が納得できるジャンプなんてできっこないのに、えっ?、このタイミングで、もう、ジャンプ?、みたいな、そんな感じなわけよ」

 なんとなく、なんとなくではあるものの、わかるような気はする。

 そもそもスモールステップとは、慌てることなく、時間をかけてコツコツと、ジャンプのための力を溜める、ことのはずだ。

 するとAくん、先ほどの、♪シャボン玉とかいう歌の、その続き(らしき)を声高らかに歌い出す。

 ♪か~ぜかっぜ

  ふっくっな~

  しゃ~ぼんだ~ま~

  とっばっそ

 「コレ、コレなんだよな~」

 ん?

 「何度、こわれて消えたとしても、どうせこわれるんだから、もう、しゃ~ぼんだ~ま~、とばすのやっめっよ~、とは、ならない」

 あ、あ~。

 「風よ、向かい風よ、吹くな、吹いてくれるな。でもな、言っておくぞ。吹き止まぬとも、オレたちは、ナニがナンでも、しゃ~ぼんだ~ま、とっばっそ、なんだからな。ということだ」

 なるほど、なるほどな~。

 ホップ、スモールステップ、ジャ~ンプ!、は、学習の、授業の、その有りようの原点。現場は、ナニかとタイヘンだとは思うけれど、ソコは、英知と気概と覚悟と、そして、トビッキリの気合いで、向かい風ごときナニするものぞ、と、シャボン玉、飛ばして飛ばして飛ばしまくってもらいたい。(つづく)