ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.810

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と四十一

「ホップ スモールステップ ジャ~ンプ!」②

 大事そうに奥からもってきた四号瓶のその栓を、やたらと慎重に開けようとしているAくん。何度も何度もプシュップシュッと、その作業を繰り返す。

 しばらくして、ようやく、落ち着きを見せた四号瓶。その落ち着きを見届けてから、私は、摘み上げたままであったそのメンマを、口の中に放り込む。

 いぶりがっことはまた違う、繊維を感じさせるシャキシャキとした歯応えがいい。絶妙なピリ甘辛感も、鼻から抜ける(鼻の中に籠る?)ようなゴマの香りも、食欲を掻き立てる。

 「美味しいですね、このシナチ、いや、メンマ。ホントに美味しい」

 「旨いだろ。発酵と天日干しとで、メチャクチャ手間暇をかけてくれた逸品だから。で、この酒と合わせてみてよ」

 そう言いながらAくんは、瓶内活性系の濁り酒の上澄みを、ユルリユルリとトクトクと、微かに桃色やら黄色やらを帯びた小振りのガラスの酒器に注ぎ入れてくれた。

 ウッスラと濁った酒が、そのガラスの可愛い色味と混じり、なんともキュートで美しい。

 私は、おもむろにメンマを、もう一つ、放り込む。数回咀嚼したあと、その上澄みを、一口、流し込む。ほんの少しソコに留める。そして、ゴクリと呑み込む。

 独特のプチプチ感が、やや濃いめの味付けにサラリと絡み付いて、心地いい。まさに、美女と野獣(といっても、品のいい野獣かな)、という、そんな感じなのである。

 聞けば、淡路島の酒だと言う。いい酒だ。(つづく)