ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.701

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と四十二

「ニトウリュウ ノ オトコ」

 高校生たちのパワーみなぎるベーコンに舌鼓を打っているうちに、ふと、すっかり忘れてしまっていたある若者のことが脳裏に現れる。

 少し前のことだが、たまたま、その、若い人形遣いと出会う機会を得たのである。

 「能」好き、「能」推し、である私は、能ほどではないまでも、その親戚筋(?)にあたる(かもしれない)人形浄瑠璃文楽、にも、無論、それなりに愛を注いできたつもりだし、これからもそうしたいと思っている。

 そんな人形浄瑠璃の、若き人形遣いである彼によれば、とにかくこの世界は奥が深い、深すぎる、ということであった。少しでも油断をすれば溺れてしまうほどだと冗談交じりに語っていたことを、思い出す。

 そういえば、工事現場でアルバイトをしています、とも。意外な言葉に、かなり驚いたことを覚えている。でも、ソコに微塵の暗さも重さもなかった。それどころか、ナニやらコチラの方がむしろ、勇気付けられたような気さえしたぐらいである。

 あの彼は、今、どうしているだろう。まだ、工事現場でアルバイトをしているのだろうか。きっと、どこまでも前向きな彼のことだから、「二刀流の男です」などと宣いながら、アルバイトと修業とのダブルワークの中で、憧れの主(オモ)遣いを目指して、日々、精進、鍛練、し続けているに違いない。

 そんな、二刀流の彼に、未来の主遣いに、乾杯! (つづく)