はしご酒(Aくんのアトリエ) その五十七
「イエロー!」
とくに大好きな色、というわけでもないのだけれど、妙に気になって仕方がない、という色がある。それが、イエローなんだ。と、Aくん。
「でも、黄信号、イエローカード、黄疸(オウダン)、黄色ブドウ球菌、など、どうしても、それはアブナイよ、みたいな、そんなイメージばかりが前面に、押し出されてくるように思えてしまうのですが」、と私。
「並べてくれたよな~、ズラリとネガティブな黄色たちを」
「ネガティブかどうかは別にして、のんびり構えてはいられない、という緊張感はありますよね、黄色には」
「そうだな、おっしゃる通り、のんびり構えてはいられないな」
しかしながら、おそらく、Aくんにとってのイエロー、黄色、には、もう少し特別なナニかがあるのだろう。
イエロー。
黄色。
なにやら謎めいてくる。
するとAくん、その謎をユルリと解き明かし始める。
「僕にとってのイエローは、光と土」
「光、と、土、ですか」
「そう、光と土。光と土のイメージが、そのままイエローのイメージに繋がっている」
「光と土か~。いいですね、それ。いい、いいです」
同じ色だというのに、その色から感じ取るものが、場合によっては真逆なほどに違う。大切なのは、まさにソコなのだろう。一人ひとりの心の有りようが、それぞれが見るその景色まで変えてしまう。面白くもあり、恐ろしくもある。
「光と土は、生命の象徴」
「生命の象徴、ですか」
「そう。光と土が命を育む。飛躍し過ぎかもしれないけれど、それは教育にも通じる、と、僕は思っている」
イエローか~。・・・
多分、その歌詞の内容とはナンの関係もないだろうが、ナゼか妙に気に入っているColdplay の♪Yellowという曲が、微(カス)かに、ドコからともなく聴こえてきたような気がした。(つづく)