ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.962

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と九十三

「イマダケ カネダケ ジブンダケ」

 ある元農林水産省官僚が打ち鳴らす警鐘が、思いっ切り僕たちを恐怖に誘(イザナ)う。彼によれば、その元凶は、政治や行政や企業やメディアの中に根深く根付く邪念、「今だけ、金(カネ)だけ、自分だけ」に、あるという、とAくん。

 イマダケ、カネダケ、ジブンダケ、か~。

 「なんだか、新種のキノコの3種盛りみたいですね」

 「そんな呑気な話じゃない」

 マ、マズい。

 言わなきゃよかった、と、またまた秒速で後悔する。 

 「新種のキノコ、などというそんなナマ易しいものじゃなくて、まさに毒、毒キノコ。この毒が、この国を、ジワリジワリと腐らせていく」

 国を腐らせていく、か~。

 なんにせよ、その毒キノコたち、「イマダケ、カネダケ、ジブンダケ」、想像以上に手強そうではある。

 「でだ、その元官僚が言うには、この国の『食』が、中でも輸入食品が、とくに『肉』が、すでに危険な状況にある、らしい」

 「輸入食品、って、輸入する相手国によるんじゃないのですか」

 「それを言うなら、輸出する相手国による、と言った方が正しい」

 ん?

 その違いがよくわからない。

 「ナニが、ドウ違うのですか」

 「つまり、輸出先の国が、どれだけ厳しいルールを設けているかによって、輸出する食品の中身を変えている、らしいんだな」

 「えっ!?」

 「ほとんどオーケーの、ザルみたいな国に対しては、成長ホルモンやゲノム食品もアリアリだということ」

 な、なんという・・・。

 先ほどの毒キノコの3種盛りによって、この国もまた、そのザルみたいな国になってしまっている、ということか。

 「結局のところ、国民一人ひとりが、いかにして正しい知識をもつかに懸かっている。一人ひとりが正しい知識をもたなければ、いつまで経ってもザルはザル、ほとんどオーケーのザルのまま、というわけだ」

 なるほど。

 「そして、ラストに、トドメに、彼はビシッと、こう言い放つ」

 んん?

 「めざせ、騙されない “知識人„ を!」

 お~。

(つづく)

ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.961

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と九十二

「ケツゼイ ツカイマセンツカイマセン サギ」

 一見、旨味がありそうな、国家的、自治体的、巨大プロジェクトで、血税は使いません、ほとんど使いません、コレだけしか使いません、などと宣い出したら要注意。というのが、もうすでに、一般常識となりつつある、とAくん。「たしかに旨味はあるかもしれないが、ソレって、ダレにとっての旨味だよ、って話だよな」、と、ソコに、畳み掛けるように熱く被(カブ)せていく。さらに、「でもね、ソレでも信じてしまう、信じたくなってしまうピーポーたちってのが、どうしてもいるわけだ。ま、コレだけ不況やらナンやらが続くと、少々怪しくても、そうした旨味がありそうなモノに気持ちがもっていかれてしまいがち、というのも、わからなくはないけどね」、と、強弱、剛柔、織り混ぜつつ、語り続けるAくんの熱量は、まだまだ下降線を辿(タド)りそうにない。一度押された怒りの愚痴スイッチは、そう簡単には解除などできないのだろう。

 「最初に、『大事な血税なれど、コレは絶対に必要なコトですから、最大この程度までの額の血税は使わせていただきたい。是非ご理解願いたい』、と、言わなきゃいけないところを、血税は使いません、ほとんど使いません、コレだけしか使いません、などと宣ってしまうその手口。場合によっては、その後の展開によっては、ソレって詐欺だろ、って、言われても仕方がないとは思わないかい、違うかい」

 詐欺、か~。

 「とりあえず、そのプロジェクトを通すために、最初のうちは当たり障(サワ)りのないモノにしておいて、上手い具合にサラッと通してからジワリジワリと、ジワリジワリとむしり取っていくわけだからな~、いやはやホントに大したもんだよ、まったく」

 Aくんが熱く指摘する、この「血税使いません使いません詐欺」。稚拙で姑息な手口ではあるけれど、結構、そこかしこでソレなりに社会的地位も得て、グチュグチュと増殖し、蔓延り、のさばり出しているような気がする。(つづく)

ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.960

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と九十一

サプライチェーンサプライチェーン?」

 「地球規模の、異常気象。侵略戦争。というか、異常戦争だな。ま、正常戦争なんてあり得ないわけだけど。さらに、異常物価高騰。さらにさらに、トンでもないほどの異常格差社会。とにかく、そこかしこで散見できる、こうした『異常』たちが、この星を葬り去ろうとしている、って感じだよな~」、と、絶望感を、目一杯漂わしつつ語り始めた、Aくん。さらにさらにさらに、コレだけ危機的なコトが押し寄せて来ているのに、未だに、政治と癒着して上手い具合にドウのコウの、とか、利権がドウのコウの、とか、己の選挙で応援してもらうためにはドウのコウの、とか、といった、アホ丸出しのドウやらコウやらが、恥ずかしげもなく、未だにバカみたいに堂々と大通りを闊歩しているのだからな、と、吐き捨てる。

 もう、そのプロローグだけで、充分に、私なんかはAくん以上に絶望的な気持ちになる。

 「そして、サプライチェーン!」

 「サプライチェーン?」

 「国際的な物品の製造やら流通やらナンやらカンやらをゴッソリ一括(クク)りにした総称。みたいな、そんなイメージかな」

 あ、あ~。

 「この星の『異常』たちによって、おそらく、近いうちに、間違いなく崩壊し始める」

 え、えっ!?

 「いい加減に考えてきたそのツケが、ココにきて一気に、というわけだ」

 う、うわっ。

 「サプライチェーンの要は、つくる力。つくれる力。そして、その環境だと思っている。ソレがあってこその流通なわけだからな」

 つくる力、つくれる力、そして、その環境、か~。

 たしかに近い未来、悲しいかな、崩壊してしまいそうな気が、グツグツと、グツグツとしてくる。(つづく)

ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.959

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と九十

「コタエルチカラ」

 全く、存じ上げません。

 ナニが問題なのか、私にはわかりません。

 法に触れることは、一切いたしておりません。

 相手のあることですので、お答えできません。

 ふ~。見事なまでの「ま、せんせんせんせん」のオンパレード。ココまで堂々と、胸を張ってズラリと並べられると、圧倒的な権力を握ってさえいれば、たいていのコトは逃げ切れるのかも、と、おもわず私まで思ってしまいそうになる。

 「権力を握るシモジモじゃないエライ人たちって、なぜ、いつだって、『ま、せんせんせんせん』のオンパレードなのでしょう」

 「ま、せんせんせんせん?」

 さすがにナンのことやらサッパリ、という表情のAくん。

 「ほら、あの人たちって、あげません、とか、わかりません、とか、おりません、とか、できません、とか、ばかりじゃないですか」

 「あ~、あげません、わかりません、おりません、できません、の、『ま、せんせんせんせん』ね」

 「そこかしこで、ナニかと『聞く力』がフィーチャーされることが多いわけですが、『答える力』の劣化もまた、負けず劣らず凄まじいものがあるような気がして」

 「なるほど、答える力の劣化、ね。君の指摘通り、たしかに感じなくはないかな。いや、感じる、かなり感じる」

 Aくんに、どうにか私の思いが伝わり、ホッとする。

 ソレにしてもだ。同じウソをつくにしても、ゴマかすにしても、言い逃れをするにしても、ソコにナンの工夫もなく、ただ「いい加減さ」の垂れ流しのようなその受け答えに、どこまで一般ピーポーを小バカにすれば気が済むのだろう、という思いがフツフツと、フツフツと湧き上がってくる。(つづく)

ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.958

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と八十九

「キクチカラ」②

 ようやくAくん、ガラスの器に氷を幾つか入れて戻ってくる。ナニやら、黒っぽいモノがコロンコロンとのっかった小皿も一緒に。

 ん?

 「なんですか、そのコロンコロンとした黒っぽいモノは」

 「椎茸。間引き椎茸、の、佃煮。可愛いだろ、小さくて。でも、大人の味なんだよ、コレが。ま、ちょっと摘(ツマ)んでみてよ」

 一気に、一気に興味が湧き上がる。

 我慢ができなくなり、指で摘んで口の中に放り込む。

 うわっ。

 「甘辛くて、上品で」

 「蜂蜜を使っているみたいなんだよね」

 あ~。

 「いいですね。上品なのにコクがある甘味の、そのあとから爽やかな山椒の香りがフワッと」

 「そうそうそうそう、ソコが大人の味ね」

 「小さいからか、凝縮感も食感もシッカリとしていて」

 「小さいからって、間引きだからって、ナメんなよ、って感じだろ」

 Aくんが注いでくれた例の芋焼酎を少し口に含む。サクランボもいい感じではあったけれど、やはり、アテ界の王道、椎茸の佃煮には敵(カナ)わない。見事なマリアージュである。

 するとAくん、「漢字は違うけれど、利(キ)き酒ってのがあるだろ」、と。

 「ききざけ?」

 「そう、利き酒、利き酒の『利く』。コレって、舌で味わうだけでなく、目も、鼻も、できることならアテとの相性も、とにかくナニもカも総動員して行われるものだと思うんだよね。この感じ、もう一方の『聞く』と似ているとは思わないかい」

 「えっ?」

 「聞く。コレもまた、耳だけでなく、脳みそも、心も、魂も、総動員して行われるもの、行われるべきもの、って感じがするんだよな」

 「脳みそも、心も、魂も、ですか」

 「でないと、聞くフリはできても、マジで聞くなんてこと、できっこないだろ」

 できっこない、か~。

 ・・・

 総動員できない。

 総動員できるほどの、脳みそも心も魂もない。

 とりあえず、耳だけで聞く。聞いているフリをする。

 フリをしているつもりが、いつのまにか、マジで聞いていると思い込んでしまう。

 結局のところ、あの人たちが宣う「私には聞く力がある」も、その程度のものなのかもしれないな。

(つづく)

ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.957

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と八十八

「キク チカラ」①

 私には聞く力がある。

 私には聞く力が、ある?

 ほ~、実に結構なコトである。と、普通は、思う。

 しかしながら、よくよく考えてみると、「聞く力」のその意味が、よくわからないことに気付く。いったん、よくわからなくなると、そもそも「聞く」ってナンなんだ。みたいな、そんなトコロまで、全くもってわからなくなる。

 聞くとは、聞く力とは、いったい、ナンなのだろう。

 「聞く。聞く、って、聞く力、って、ナンだと思いますか」、と私。

 「聞く?。聞く力?。またまた難しいコトを言ってくれるよな~、君は」、とAくん。

 いつものパターンだと、このあと、Aくんは、間違いなく沈黙の扉を抉(コ)じ開ける。

 「・・・」

 やっぱりだ。

 氷が溶けて単なる水になってしまった、ということもあってか、Aくん、またまた奥へと姿を消してしまう。

 聞く。

 聞く力。

 聞く、力。

 ん?

 じゃ、聞く力の反意語は、ナンだろう。

 聞けない、力?

 聞かない、力?

 聞こえていても気付かない、力?

 聞こえていても気付かないフリができる、力?

 マ、マズい。

 さらに一層ヤヤこしくなってしまった。

(つづく)

ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.956

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と八十七

「バジトウフウ! バジトウフウ?」

 「馬耳東風」

 ん?

 「馬の耳に念仏」

 んん?

 「ナゼに、馬」

 んんん?

 「ナゼに、東の風」

 んんんん?

 「ナゼに、念仏」

 ・・・。

 「やっと、厳しい冬が過ぎ、ようやく心地よい風が頬を撫でる季節になっても、どんな、ありがたい話を伺ったとしても、ウルトラマイペースの馬たちは顔色一つ変えず、知らん顔。コレだよ、コレ」

 え?

 「こち、ならい、いなさ。そして、はえ

 ええ?

 「東の風や南の風には、北風や西風にはない『ありがたさ』みたいなモノが、古来からあったと思うんだよね」

 えええ?

 「そんな、ありがたい風であったとしても、馬は、平然と知らん顔。気付きさえしない。気付こうともしない。わかるかい、コレ、コレなんだよな~」

 ええええ?

 「馬は、周りを見下しているわけでも、エラそうにしているわけでも、責任を取る気などサラサラない、というわけでもないのだけれど、ソレでも、馬はやっぱり馬耳東風、馬の耳に念仏、な、わけよ」

 ・・・。

 「でもね、仮に、大いなる責任がある立場のピーポーたちまでもが、そんな、馬たちみたいな『知ったこっちゃない』モードで、ナニゴトも、平然と、馬耳東風やら馬の耳に念仏やらをヤラかしているとしたら、どうだい?。そりゃ~もう、お天道(テント)さまはお見通し、黙ってなんているわけなくて、『バカヤロウ、澄ました顔して知らんぷりしてんじゃね~よ』って、絶対に、一発かましてくれるに違いない、と、僕なんかは思っちゃうんだよな~」

(つづく)