ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.853

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と八十四

「シンジツヲ ミヌケルカ?」

 「真実を見抜くことの難しさ、痛感するよな~」

 重たい溜め息が、そう呟いたAくんの口元からズルリと垂れ落ちる。

 「真実など、そう簡単には見抜けない、と?」

 「そう。しかも、見抜く力は、心が乱されるようなトンでもないコトが起こってしまうと、更に一層、その精度が低下する」

 たしかに、心が乱れてしまっては、真っ当な判断など、到底できそうにない。

 「だからこそ、平時の内に、どれだけ多くのクールな学びをもてたか、もってこれたか、で、全てが決まってくるような気がするわけよ」

 クールな学びの時間を、か~。

 「たとえば、インフルエンサーとして影響力があるにもかかわらず、視野の狭い摘まみ食い程度の学びで、テレビなどでコメントをしてしまうタレントさんたち。ま、テレビ局の強い意向もあるのだろうけれど、好ましくはないよな」

 「上下左右裏表、様々な視点から討論されていくような番組づくりなら、ソレはソレでいいと思います。でも、一つの方向に軽率に突き進んでいくような構成の中では、いわゆるタレント、と、呼ばれる方々が、思惑通りに都合よく利用されている、みたいな、そんなイメージが、どうしても、へばり付いてしまいますよね」

 「とりあえず、視聴率は稼げるだろうから。なんにせよ、平時の学びが、そういった、クールとは程遠いテレビやらネットやらがメイン、と、なると、そりゃ、自ずと偏(カタヨ)ってくるわな~」

 この場合の「クール(cool)」とは「冷たい」という意味なのではなく、おそらく、偏りがちな感情を消し去って、ものごとを「冷静に」見つめてみよう、という意味なのだろう。

 クールな学び。 

 クールな視点。

 クールな分析。

 そして、そこからの、クールな判断力。

 真実を見抜けるかどうかは、まさに、ソコにかかっている、のだろうな。(つづく)