ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.753

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と九十四

「マンインデンシャ ハ フマンインデンシャ」①

 致し方ないか~、と、言ってしまえばソレまでなんだけれど、ホントに致し方ないのか、と、高校生の頃からズッと思い続けているのが、あの、忌々(イマイマ)しい「満員電車」なんだよな、とAくん。

 とくに、大都会の平日の朝に、あの「満員電車」は悲しくなるほどよく似合う、と、ほくそ笑みつつ言い添える。

 満員電車、か~。

 Aくん同様、いいイメージはない。そこはかとなくながらも、私が、以前から抱いている満員電車のイメージは、この「現代社会の縮図」である。この社会が抱えている諸々が、思いっ切りギュッと凝縮されているように思えてならないからだ。

 するとAくん、一気にタイムマシンで、あの頃までワープする。

 「高校生の僕は、なぜ、都会という名の、こんなクソ狭いエリアに、会社も学校もナニもカもギュギュっと集まってしまっているのだ、などと、ギューギュー詰めの車内で、揺られに揺られながら、3年間、グチグチグチと、人知れず愚痴り続けていたんだよね。それでも、結構マジメなものだから、遅刻も仮病による欠席もせず、やたらキチンと、毎日毎日満員電車で登校するわけ」

 「私のように、ノンビリと始発電車で電車内読書、電内読書、を、楽しみつつ通勤、みたいな、そんなそっち側の選択肢はなかったのですか」

 「ないない。始発でノンビリと登校、などという発想には絶対にならない。高校生にその発想は、ない」

 なるほど、高校生にソレは、ない、かな。

 当然のごとく、どうしても、あまりにも早く学校に着いてしまうものだから、その近くの喫茶店で、スポーツ新聞片手にモーニングで時間潰し、などという高校生なんて、たしかに、ちょっと想像しにくい。(つづく)