はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と九十五
「マンインデンシャ ハ フマンインデンシャ」②
質問ついでに、私が抱いている満員電車に纏(マツ)わるあるコトを、ほんの少しソフティケイトした上で呟いてみせる。
「いわゆる合理化で、少なくなってしまったとはいえ、この国中に張り巡らされた線路のその上を、朝の通勤電車たちは走り続けていますよね」
「とくに地方は、ホントに少なくなってしまったがな~」
「仮に、仮にです、そうした通勤電車たちが、どこもかしこもほぼ同じぐらいの乗車率に、混み具合に、なっていたとしたら、この国の全体像も、その有りようも、ナニもカも、もう少し違ったものになっていたような気がするんです」
「そうだな、違っていたと思う。少なくとも、東京みたいなオキテ破りの巨大都市は、生まれなかったかもしれない。でも、そうはならなかった。そうはならなかったからこそ、大都会の朝の満員電車は、ピーポーたちの、グツグツと煮詰まりに煮詰まった数多の不満に満ち満ちた、不満まみれの『不満 in 電車』にあいなってしまった、ということなのだろうな」
(つづく)