ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.172

はしご酒(3軒目) その壱

「チョットシタ テンゴク ヘノ カイダン」①

 呑み足らない、というわけではないが、帰り道にあるショットバーの前を、全く気付いていないような顔をして、スッと通過するなんてことができるのか、などと、なんとなく思ったりしつつ歩く。

 たしかに、いい感じに酔いも回り、それなりに、はしご酒モードに、という気もしないわけではないが、このいい感じのまま、今宵は御開きとしようか、と、考えたりもする。

 さて、どうしたものか、と、薄ぼんやりと悩んだりしているうちに、私は、ちょっとした天国、への階段を、一段一段踏みしめながら、ゆっくりと上っていた。

 そう、天国への階段。

 そして、真鍮製のノブの冷たさを掌(テノヒラ)にジンワリと感じながら、その、少し重たいドアを静かに開けたのである。(つづく)