はしご酒(Aくんのアトリエ) その七百と十
「タチバシュギ!」
「結局のところ、人は、それぞれの立場で、ヒトを、モノを、褒めたり、貶(ケナ)したり、しているだけなのかもしれないな」、とAくん。
あ~、立場、立場主義。
私イチオシの元某大学の先生も、大抵の場合、人は、その、立場立場の立場主義というヤツによって支配されている、みたいなコトを宣っておられていたような気がする。
「真実を、真実の正義を、探求、追求していこうとする時、どうしても、立場がその足を引っ張る」
「立場なんて、所詮、柵(シガラミ)みたいなものですからね」
「柵?、柵、ね~。そういえば、柵を意味するfetter(フェッター)は、たしか、元々は、自由を束縛する鉄の鎖、拘束具。じゃ、なかったかな~」
「フェ、フェッター?、って、そういう意味なのですか」
「元々ね。だったと思う。そんなモノを付けられていて、真実を追求していくなんてこと、できるわけねえよな」
できるわけがない。
しかし、海の向こうのピーポーたちも、柵を、自由を奪う鉄の鎖、拘束具、だと、思っていたんだ。ソレって、かなり興味深い。
「fetterを払拭できないままエラそうに語られてもな~」
「とりあえず、聞き流しておいた方が無難かもしれませんね」
「だよな。ただし、間違いなくfetterはトンでもないんだけれど、ギリシャで食べたfeta(フェタ)、フェタチーズは、美味かったんだよな~」
ん?
「羊のミルクでつくられたフレッシュチーズで、ちょっと塩味(エンミ)はキツいけれど、生野菜との相性はバツグンで、ソコにタラリタラリとエクストラバージンオイルを垂らすだけで、もう」
きっと、バツグンに美味しいのだろう。しかし、申し訳ないが、さすがにそのギリシャのチーズの話にはついていけず、「すいません、トイレ、ドコですか」、と、その熱弁の腰をパキッと折らせてもらう。考えてみると随分と長い間トイレに行っていない。気が、膀胱の筋肉が、緩んだのか、一気に尿意が押し寄せてくる。大慌てで、背後の突き当たりにある、らしい、トイレへ、スタートダッシュを掛ける。(つづく)