ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1278

はしご酒(Aくんのアトリエ) その七百と九

「センキュウヒャクハチジュウゴネン マデハ センゼン?」

 「寿(コトブキ)退社!」

 ん?

 「寿退社って、体(テイ)のいい解雇通告だよな」

 んん?

 「こんな、雇う側にとって好都合な言葉があったりするものだから、『そうか、仕事って結婚したら辞めるもんなんだ~』みたいな、そんな意識が、女性たちに、知らず知らずの内に上手い具合に植え付けられてきたのだと思う」

 ん、ん~。

 「でも、さすがに、もう、寿退社なんて言葉、死語でしょ。『年金支給80才まで引き上げるからソレまでシッカリ働いてくれたまえ』的な暴言を平然と宣えてしまえる政治家まで出てきたりしていますからね。しかも、結構、人気があるというから驚きです」

 「あ~、アレね。巷を賑わしたあの『高齢者集団自決』論の親戚筋みたいな暴論を、妙に爽やかに、自信満々に、オマケに中途半端に、展開しとったな~」

 「暴論って、一部の人たちにとっては、メチャクチャ、耳触り、いいですもんね」

 「いいよな~。おそらく、その手の耳触りの良さで、あのバッシングなんてのもイヤになってくるほど蔓延(ハビコ)りまくり倒しているんだろうからな」

 暴論で、一部の人気を獲得する。

 そして、その一部の人気だけで、たとえば、政治家になれたりもする。コレって、相当、ヤバいコトかもしれない。

 「時折見掛ける知事さんの暴言なんてのも、そういった一部の応援団の下支えによって、英雄の甘言(カンゲン)にもなり得るということだ」

 英雄の甘言にも、か~。

 「トにもカクにもだ」

 Aくん、力付くで逸れかけていた話の流れを元に戻す。 

 「男女雇用機会均等法が成立した1985年まで、女性は、圧倒的な差別を受けてきたわけ」

 「せ、せん、きゅうひゃく、はちじゅう、ご、ねん、までですか」

 当たり前のコトが当たり前でない時代を、バカなカチコチ男たちがつくり、守り続けてきたということか。

 「そう、1985年。それまでは、銀行あたりで、採用時に、『3年で辞めてもらいます』などとエラそうに上から目線で宣われた、なんてコトも、結構あったりしたっていうからな」

 なんと。

 で、体のいい解雇通告である寿退社に繋がっていくわけか。どうせなら、せめて、「この度、家事が得意の夫が、寿退社させていただきます」、で、あれば、まだ、少しは救いがあるような気はするが。

 「1985年までは、戦前!」

 「えっ?」

 「そんな時代を生き抜いてきたある女性が言い放ったその『1985年までは戦前』という言葉が、ナゼか、妙に、頭の中に残っているんだよな~」

 1985年までは戦前、か~。

 なるほど、なるほどな。

 女性たちにとっては、そうかもしれない。いや、そうだ。女性たちの戦後は、1985年から。しかも、まだまだその途上、道半(ナカ)ば。そういう意味でも、やっぱり、もう、そろそろ、女性党女性党の誕生。に、大いに期待する。(つづく)

 

 

追記

 もう、ほとんど、テレビは、某国民営放送しか見なくなってしまったけれど、その、某朝ドラでも、某大河でも、そして、それぞれの裏側でも、表側でも、たまたまかもしれないが、女性が、キラキラと輝いている。そういうキラキラ、とてもいい。嬉しくなってくる。