はしご酒(Aくんのアトリエ) その七百と八
「ニンポウ アヤシサヲ サワヤカサデ ガクレ!」
♪みじ~んがっくれっだ
か~えんのじゅつだ
わる~いや~つらを
や~っつ~けろっ
ふじまる~
ふじまる~
しょ~ねん
に、ん、じゃ~
な、な、な、なに!?
唐突に、またまた声高らかに歌い始めたAくん。このパターン、もう充分に慣れているはずなのに、不覚にも、毎度毎度驚かされてしまう。ま、幸い、街の居酒屋ではないので周りを気にする必要がない分、いつものハラハラ感はないが。
「僕たちを煙(ケム)に巻く忍法みたいなもんだよな」
ん?
「つまり、真面目に真正面から政策論争、なんてことは、まず、しないってこと。とくに、グチャグチャッと怪しさに塗(マミ)れまくっているような時なんかは、とりあえず、ナンとなくの爽やかさで煙に巻いて逃げ切りを図る、みたいなことしか、考えてねえんだよな~あの人たちは」
あ、あ~、あのコトか。
「遅かれ早かれやって来るであろう己の選挙に有利になるなら、この際、政策なんかはドウでもよくて、とにかく上っ面の人気さえあれば、その顔を、トップに据えたいわけよ」
う、わ~。
「まさに、微塵(ミジン)がくれ、ならぬ、『中身の伴わないナンとなくの爽やかさで』がくれ」
爽やかさで、がくれ、か~。
ふ~。
なんて稚拙で姑息な忍法なんだろう。
少年忍者、風のフジ丸も、きっと、草葉の陰で泣いているはずだ。(つづく)