ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.164

はしご酒(2軒目) その六十六

「カミヒコウキ」

 幼少の頃、他にすることがなかったのか、と、突っ込れそうになるぐらい、紙ひこうきを折っては飛ばし、折っては飛ばし、喜んでいた。

 数多ある折り紙の中で、空を飛ぶことができた折り紙は、紙ひこうきだけだった。それゆえに、空飛ぶ紙ひこうきは、私にとって特別なモノであったのだろう。

 この紙ひこうき、折り紙であるだけに、その折り方が、もちろん重要事項なのだけれど、それ以外にも、紙の材質やら飛ばし方やら、さらには、風やら小雨やら、といったナンやらカンやら、によっても、そのフライトスタイルは、ドンドンと限りなく無限、に近づいていく、から面白い。

 一気にグ~ンと舞い上がる、ス~っと地味にしつこく低空飛行、同じところをクルクルと、などなど、実に個性豊かだ。

 さらに、いくら試みても不調の場合は、いま一度折りなおしてみる、という手があるし、不覚にも雨で湿らせてしまった機体も、乾かす、という手がある。

 でも、腹を立てたり、絶望したりして、機体をグチャグチャにしたり、破ったり、燃やしたり、そんな、たりたりたりをしてしまっては、さすがに、不死身の紙ひこうきも、お陀仏。取り返しのつかないことだけは、くれぐれも避けなければならない。

 そんな愛しの空飛ぶ紙ひこうき、なんとなく、人生と似ている、ように思えてならない。だから、人生もまた、面白いのかもしれない。

 そして、紙ひこうきも、人生も、個性豊かでスペッシャルなフライトを終えたあと、・・・静かに、静かに着地する。(つづく)