ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1195

はしご酒(Aくんのアトリエ) その六百と二十六

「ゼンイ ヲ タブラカス」

 「たぶらかす」

 「えっ」

 「たぶらかす、の、漢字、知ってるかい」

 「た、たぶらかす、ですか」

 たぶらかす。

 いったい、どんな漢字なのだろう。

 全くもって、見当も付かない。

 「存じ上げないです」

 「僕も、つい最近だよ、知ったのは」

 ますます、興味津々。

 すると、Aくん、本棚の前に置かれていたホッチキスで束ねただけの小さなノートをペラリと捲(メク)るや否や、マジックで、その漢字を書いてみせる。

 う、うわっ。

 「も、ものスゴい漢字ですね」

 「だろ。僕も、初対面の時は、さすがに、ちょっと、たまげた」

 たまげた?

 ドコの方言?

 でも、たまげた、が、いい。まさに、ドンピシャだ。

 その、「たまげた」漢字が、コレ。なんと、言偏(ゴンベン)に「狂う」。「狂」が言偏の横に、不気味に、へばり付いている。

 「言葉巧みに、騙(ダマ)し、惑わし、欺(アザム)き、弄(モテアソ)ぶ。その漢字、『狂ってる』としか思えない魂の有り様(サマ)を、見事なまでに言い表していると思わないかい」

 思う。トンでもなく思う。

 「この『誑(タブラ)かす』が、不本意ながらもグチュグチュと、この社会の中で増殖しつつある」

 誑かす、が、増殖?

 「善意を、誑かす、わけよ」

 善意を、誑かす?

 「人の善意を、いいように利用する」

 それ、なんとなく、わかるような気がする。

 「そして、理不尽に、裏切る」

 裏切る、か~。

 もちろん、真面目に頑張っておられる方々は、数多くいる。私の、数少ない政界系の知人も、ソコまでしなくていいだろ、と、いうぐらい、僅(ワズ)かな貯えながら、ほとんど持ち出しで、頑張っている。でも、悲しいかな、残念なことに、そうではない方々もイヤというほどいるのだ。

 「政界、経済界、芸能界、その他モロモロの界界界で、その手の『誑かす』系たちは、気持ち悪いぐらい幅を利かせているんだよな~」

(つづく)