はしご酒(4軒目) その百と百と三十六
「フトクテ ホソクテナガイ オツキアイ」
細くて長いお付き合い、こそが、太いのだ、と、唐突に、意味不明に、語り出すAくん。
「細くて太いのですか」
「そう。細くて長い、という、そのスタンスが、太い、と、言ったほうが、わかりやすいかもしれないな」
全く、わかりやすくない。
「わからない、といった顔つきだな」
「そんなこと、・・・ちょっとだけ、わかりにくいかも」
「つまり、三輪やら、小豆島やら、島原やら、の、あの、そうめん、だな。とくに、三輪の超極細麺、白龍、アレは凄まじい。そんな究極のジャパニーズアルデンテ、そうめん、にしても、ソコに、柔軟性がなければ、粘り腰がなければ、細くて長く、なんてことは、あり得ない、ということだ」
ということだ、なんて言われても、どういうことだ、と、もう一度、問い返したくもなるけれど、その、柔軟性がなければ、というところだけは、なんとなく理解できるような気がする。
見ための太さよりも、そのスタンスの太さ、こそが、ホンモノの太さ、なのだということを、Aくんは、言わんとしているのだろうけれど、やはり、わかりにくい。
おそらく、ナニかがあったのだとは思うが、Aくんが、ナゼ、こんな話をし始めたのか、も、正直なところ、わからない。ただ、わからないけれど、伝わってくるものはある。
太くて、細くて長いお付き合い。
最初は、違和感しかなかったけれど、不思議にだんだんと、私の心に馴染んでくる。(つづく)
追記
あの「満月ポン」がそうであるように、全くもって全国区ではないけれど、地方には、その地で、圧倒的な人気で支えられているスグレモノ、というものがあったりする。私は、ソレらを「ローカルメジャー」と呼んでいる。そんなローカルメジャー、や、どこまでも控えめなローカルマイナー、を、求めて人は、旅人になるのかもしれないな~。