ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.494

はしご酒(4軒目) その百と百と三十五

「イケブクロ ノ ドライカレー」②

 そんな懐かしの、我が家のカレーライスの思い出に、ボンヤリと浸っていると、突然、あるドライカレーのことを思い出す。

 学生の頃、友人と、なんとなく入った喫茶店みたいなところで食べたドライカレーのことが、鮮烈に蘇ってきたのである。

 もともと、グチャグチャッと、かき混ぜたようなものが苦手で、大好物のたまごかけごはんも、極力、かき混ぜない。ドコもカシコも同じという均一感が、どうしても気持ち悪く、許せない、のかもしれない。余談だが、そういえば、大阪が誇るポンせんべい「満月ポン」も、意図的に、ソースの濃いところと薄いところがあるようにしている、と、以前に聞いたことがある。

 そんな私が、出会ったそのドライカレーは、水分のほとんどがなくなった、とことんドライなカレーが、グチャグチャッとかき混ぜられることなく、無事、ライスの上に乗せられた、品の良いものであった。もちろん、そのファーストインプレッションは、「違和感」、ではあったのたけれど、すぐさま、「好感」に転じる。

 ちなみに、この、違和感を、ナニがナンでもドコまでも違和感として見るのではなく、その違和感が、スルリと好感へ流れ移っていく、というこの感じ、妙に心地よく、大好きだ。言わずもがな、この感じは、あのときのあのドライカレーに限ったことではなく、普段の生活の中の全般においても、大切にしたい、この感じなのである。

 トにもカクにも目から鱗(ウロコ)の美味しさだった。いわゆる、幻滅の錯覚、というヤツなのかもしれないけれど、本当に美味しかったのである。

 池袋の、あのドライカレー、この今も健在なのだろうか。

 健在なら、もう一度、食べてみたいな。(つづく)