ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.785

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と十六

キカイダー!」

 残念ながら、『佐武と市捕物控』のことはサッパリだが、その作者である石森(石ノ森)章太郎のことは、あの仮面ライダーなどの人造人間系ヒーロー絡みで、よく存じ上げている。

 そんな、彼が繰り出す人造人間系ヒーローは、なぜか妙に切ない。とくに、「左右非対称のデザイン」が斬新でキュートな『人造人間キカイダー』は、「不完全な良心回路」をもつロボットの苦悩というコンセプトからして、切なさが際立つ、機械と人間の渾然一体型ヒーローなのである。

 しかも、その際立つ切なさを、更に、もうワンランク上にまで押し上げてしまうのは、不完全な良心回路をもつキカイダーが、人間になることを、人間に近づくことを、目指してしまっているからなのである。

 リアルタイムで見ていたわけではないけれど、たしか、1960年代後半にTVで放映されていた人気ホラーアニメ『妖怪人間ベム』においても、彼らは、彼女らは、「はやく人間になりた~い」などと叫びながら、人間になることを目指していた。

 キカイダーよりも、ベムたちよりも、ウンと人間の方が、いい加減で、不安定で、壊れやすく、悪魔に魂を奪われ易いにもかかわらず、なぜに、彼らは、彼女らは、そんな人間ごときを目指したのだろう。

 もしかすると、近い将来、完全な良心回路をもつロボットになることを夢見た『ニンゲンダー』や、「はやく妖怪になりた~い」と叫びながら本物の妖怪を目指す『人間妖怪ベム太郎』などというアニメが、お茶の間の人気を掻っ攫(サラ)い、大ヒットする日が、やってくるかもしれない。(つづく)