ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.670

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と十一

「バクザン ハクザン カイザン」②

 「書の世界も講談の世界も、当然のごとく奥が深い。深すぎて、その個人のもつ技量、時間、だけでは、到底足り得るわけもなく、何代にも渡ってその芸を繋げていく。この繋がっていく感じ、僕は好きなんだな。そして、そのもう一方で、行政関連にもまた、タイプは違うものの、脈々と、代々の担当者たちがバトンタッチしながら繋げていくモノがある」

 いわゆる引き継ぎ業務、というモノのことを言っているのだろうか。Aくんにも行政にも申し訳ないが、そういったモノに、書や講談という芸がもつ「深み」があるとは思えないのだけれど。

 「しかしながら、正義を貫く強い信念をドコかに置き忘れてしまえば、文書改竄(ブンショカイザン)などといった闇の深みにハマってしまうこともまた必然。ズルズルと、ズルズルと、深みにハマったまま引き継がれていく。

 あ~、そういう「深み」か。それならば理解できる。理解できついでに、その勢いに身を任せて、私は、「つまり、書も講談も、邪念に塗(マミ)れれば芸が荒れる、と同じように、行政関連もまた、邪念に塗れれば正義が荒れる、ということですよね」、と、宣ってみる。

 するとAくん、またまた2割増しほどに目を見開いて、得意の力技で結論付ける。

 「まさにソレだよ、ソレ。二手に分かれたピンチがチャンス、と、同様に、コイツもまた、同じ深みでも、月とスッポン。深みはメザすものであって、ハマるものじゃない、ということだ」

(つづく)