ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.640

はしご酒(Aくんのアトリエ) その八十一

クロウタドリ!」①

 ザ・ローリング・ストーンズほどではないものの、なぜか苦手であったザ・ビートルズ。その、私とのキョリが、どうしても、なかなか縮まらなかったのである。

 当時、ウブで生真面目な少年であった私にとって、ヤンチャな前者とのキョリが縮まらないのは自然と言えば自然、ということになるのだろうけれど、どちらかというと優等生(っぽく見えていた)的な、そんな後者とのキョリが縮まらなかったことは不自然と言えば不自然、ということになる。

 ハードロック命のAくんもまた、きっと、えっ、ザ・ビートルズ?、合わないんだよな、聴いたこともねえよ、などと、吐き捨てるように宣うに違いない。

 「ザ・ビートルズ、なんて、聴かないですよね」

 「聴くよ」

 は!?

 「聴く?」

 「好きだよ、とくに、リンゴ・スター

 リ、リンゴ・スター

 「中学生の頃だったかな~、ラジオから聴こえてくるわけよ、リンゴ・スターが、あの朴訥(ボクトツ)とした声で、カッコよく、一本調子で歌い上げる♪明日への願い、がね。イッドンカムイ~ズィ~ ユノッ イッドンカムイ~ズィ~、オープニングからいいんだよな~。簡単さ、やってみれば簡単だってことがわかるってもんさ、といった具合に、とにかく、背中を押して押して押しまくってくれる名曲、だと、今でも思っている。さらに、独断と偏見バリバリで言わせてもらうとするならば、ザ・ビートルズというモンスターバンドの解散にへばり付く、目一杯重たいネガティブな諸々を、ヒョイと軽く拭い去って、次への扉を開け放つ、という、そんな、一つのエポックメイキングとなり得た象徴的な一曲、だと、も、思っているわけだ」

 いつもながらのワケのわからなさ満載だけれど、リンゴ・スターのその曲に対する熱き思いだけは、イヤというほどコチラまで、伝わってはくる。(つづく)