はしご酒(4軒目) その百と九十六
「オキナワ ノ スペシャルティ ノ ソコヂカラ」②
それにしても不思議な香りだ。
コーヒー香とガーリックとの相乗効果が、サッと焼かれたお肉を包み込む。甚だ、面白い。
それを、至極、旨そうに頬張るAくん。
「ヒノヒカリとの相性は微妙かもしれないが、表面にへばりついた黒いブツブツは、お肉には、かなり、いい仕事をしている」、と、宣いつつ、スッと、私にも勧める。
ほんの数切れが、チョコンと皿に盛られているだけなので、遠慮しながら、一番小さな、その一切れを、いただく。
「面白い。おっしゃる通り、お肉との相性は、とてもいいと思います」
香りから感じた面白さが、そのまま、その味にまで、しっかりとリンクしているから、さらに面白い。
思いもしなかったコーヒー繋がりから、ふと思い出した沖縄の、あのときの、あのコーヒー。そんなコーヒーのアレやコレやを、Aくんに話してみる。
「あ~、僕も飲んだことあるよ。そうそうそうそう、雑味が全くない、というその感じ、ハッキリと覚えている。沖縄か~、行きたくなってくるよな~」
なんだかちょっと、嬉しくなる。
しかしながら、南国とはいえ、季節によっては、台風だってガンガンと来たりする。甚大な被害を受けたコーヒー園もあると聞く。コーヒーの国産栽培もまた、それほど容易(タヤス)くはないということだ。
そんな沖縄には、ウチナータイムと言われる独特な島時間感覚、というものがあるという。ノンビリとした時間の流れ、そうした中で生きる「しまんちゅ」たちだけれど、台風ごときには屈しない、並々ならぬ「しまんちゅパワー」がある、と、私は思っている。
沖縄の、コーヒーも、しまんちゅ、も、まさに、スペシャルティの底力なのだ。(つづく)