ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.387

はしご酒(4軒目) その百と三十八

「ココロ アタタカク アタマ ツメタク」

 心、あたたかく、頭、つめたく。

 ある若いお坊さんとの何気ない会話の中で、彼の口からサラリとこぼれ出た言葉である。

 サラリとこぼれ出た言葉のわりには、あまりにスルリと私の心に沁みたものだから、おそらく、心の有り様(ヨウ)の、一つの境地のようなものを、その若いお坊さんが、ユルリとさりげなく、指し示してくれたのだろう、と思う。

 誰しもの心の中のどこにでもある油断の隙間は、往々にして、悪魔の囁きに、いとも簡単に、してやられがちなのである。それほど、人の心などというものは、ひ弱で、フワンフワンとだらしなく、無責任に、うつろい気味である、と、言えるのかもしれない。

 そんな私の、私たちの、心の中の油断の隙間に、サラリと喝(カツ)を入れてくれたのだな、きっと。

 「心、つめたく、頭、あつく」、などというトンでもない悪魔の囁きに、その隙間がスッカリ埋め立てられてしまうことのないように、心して、さらに心して、そして、できる限りの気を溜めて、念じておくことにしよう。

 心、あたたかく、頭、つめたく。

(つづく)