はしご酒(Aくんのアトリエ) その九百と弐
「マエニナラエ ミギムケミギ ヒダリムケヒダリ ヤスメ」
「今でもやってんのかね~」
「えっ!?」
「朝礼や運動会なんかの、ほら、あれ」
ほら?、あれ?
「前に倣(ナラ)え。右向け右。左向け左」
「あ、あ~」
「アレって、小学生の頃からナンとなく、違和感、も、抵抗、も、あったんだよな~」
ん~。
当時はソンなこと、微塵も思わなかった、が、あらためてソウ言われると、たしかに軍事教練っぽい、か。
「ツベコベ言わずに、前に倣え。右を向けと言われたら右を向き、左を向けと言われたら左を向け。って、アレから半世紀以上経った今でも、思い出す度、気持ちが悪くなる」
「命令に従え、ですからね」
「オマケに『休め』、だぜ。ナゼか、みんな、全く同じポーズで、休め」
みんな、同じ、休め、か~。
「同じポーズでは、休めんだろ、普通」
おっしゃる通り、同じポーズでは休めない。
「先ほどからイロイロと、圧倒的な権力を握ってしまったあの人たちの『ヤラカシ』と、ソコに群がるピーポーたちのオンパレード、な、わけだけれど、ソレらのベースにあるのは、この、『前に倣え。右向け右。左向け左。休め』なのかもな」
ん、ん~、た、たしかに。
どんな人間も、いったん圧倒的な権力を握ってしまうと、あるいは、魅入られてしまうと、御多分に漏れず、ドイツもコイツも、ナニもカも、少数意見などには目もくれず、強引に、己の思い通りにコトが運ぶよう「前に倣え。右向け右。左向け左。休め」、という、限りなく毒っぽい蜜の味に、病魔に、取り憑かれ、ソコから抜け出せなくなってしまうのかもしれない。(つづく)