はしご酒(Aくんのアトリエ) その九百と壱
「ダンケイ ダンシ? ダンソン ジョヒ? チョッケイ チョウシ?」
「そんな不愉快極まりない、あの人たちにとって好都合の、『伝統』。の、その代表格の一つが、例のあの、『男系男子(ダンケイダンシ)』、かもな」
ダンケイ、ダンシ?
「イツの時代のコトよ。イツまで、ドコまで、男尊女卑なのよ。って、話なわけ」
イツまでドコまで男尊女卑、か~。
「この、怪しすぎる四文字熟語、『男系男子』。ドコからドウ見ても聞いても臭っても、『セクハラ』、『パワハラ』、『差別』、以外のナニモノでもねえだろ」
たしかに、その「セクハラ、パワハラ、差別」感、ハンパない。
「男、系、男、子、だぜ。よくは知らねえんだが、ソレって、生んだ母親なんてどうでもよくて、生ませた父親だけが大事なんだってことだろ。しかも、とにかく子どもを生めと。どころか、男の子を生まなきゃ話にもナンにもならねえと。みたいな」
ヒ、ヒドいな、それ。
「そんなのが、この国、古来の、伝統、って、いったい、ナンなんだよ」
仮に、あの人たちが宣うそんなのが本当に伝統なら、そんな伝統に支えられているのなら、だから、そんな伝統でも守っていかないといけないのなら、「じゃ、もう、象徴なんて、いいや」、って、気持ちに、ソレほど否定論者でも廃止論者でもない私でもなってしまいそうだ。
「普通」
「ん?」
「普通、ナニかを変えたい、変えなければならない、時って、現代社会に、現代社会の倫理に、道徳に、常識に、加えて、世界の民主主義社会の常識に、合わなくなってきた、時、ですよね」
「そうだな、その通り。だけど、あの人たちは、現代社会ではなくて、過去に、明治維新に、あるいは太古に、逆戻り。温故知新とでも思っているのかね~」
温故知新の意味まで履き違えて、そして、男尊女卑の象徴をつくり上げる、か。
そう、男尊女卑の象徴。
凄まじく自己都合の、自己満足の、モダンヘリテージ。
「いわゆる、先祖帰り、って、ヤツか。ご先祖さまたちの前時代的な価値観が、現代に蘇る」
先祖帰り、か~。
なんとなく、呪い、っぽい。
「私ごときにはわからないナニかがあるのでしょうけど、ココは、とりあえず、単純に、『直系長子(チョッケイチョウシ)』で良くないですか」
「とりあえずはソレでいい。と、僕も思うけれど、先祖帰り系のオヤジたちが、そんなオヤジ系のオネエさんたちが、『男系男子こそが美しきこの国の伝統、この国のidentity(アイデンティティ)』などと宣い出すものだから、なんとも不愉快極まりない、わけよ」
伝統さえも、アイデンティティさえも、そして、あの、「象徴」さえも、己たち都合の呪いの産物に仕立て上げてしまう、その悪魔の所業。たしかに、呆れ果てるぐらい、不、愉、快。(つづく)