はしご酒(Aくんのアトリエ) その八百と八十三
「ヘイテン!?」
「少し前、お世話になっていたお弁当屋さんが、突然」
ん?
「閉店」
ん、ん~。
そういえば、私の周りでも、ココにきて、何軒か暖簾を下ろされているが。
「あの女将さんの小料理居酒屋と、このアトリエの、その真ん中辺りの路地をほんの少し入ったところにある小さなお弁当屋さん。主菜だけが二種類あって、好きな方を選べる日替わり弁当なのだけれど、こんなご時世であるにもかかわらず、できる限り食材に拘(コダワ)って、なんとお米もブランド米で、それでいてお値段はグッと抑えられていて、という、地元の隠れた名店で、もちろん人気店」
だと思う。今どき、そんなお弁当屋さん、そうそうない。
「老体に鞭打って、ご夫婦で頑張ってこられただけに、まさに青天の霹靂。心底、ショックだった」
Aくんの声からも、表情からも、そのショック感、充分に、痛いほど伝わってくる。
「で、その時に、思ったわけよ」
ん?
「よく、『学校は社会の縮図』などと言われたりするけれど、むしろ、『閉店こそが社会の縮図』なんじゃねえのか、ってな」
むしろ閉店こそが社会の縮図?
社会の、縮図、か~。
「高齢化。後継者、働き手、不足。そして、食材、賃貸料、光熱費、などの、物価高。賃金だって今まで通りってわけにはいかない。だけど、だからといってそう簡単に価格転嫁なんてできるはずもなく」
おそらく、私の周りの閉店たちも、そんな感じだったのだろう。
「更に、ソコに押し寄せる、地方の過疎化、衰退」
地方の過疎化、衰退、か~。
たしかに、地方は、私が思うよりも、もっと、深刻なのに違いない。
「そんな社会の切実な問題たちに背を向け、ナゼか能天気にヘラヘラしがちなあの人たちを、どうにかして作品にできねえものかとアレコレやってはみるけれど、そうは問屋が卸さない、卸してくれない、って、感じなわけ」
ヘラヘラしがちなあの人たちを作品に、か~。
・・・、なるほど。
よくはわからないが、なんとなく面白そうだ。
ナゾに包まれた、Aくんの作品、そして、制作に対する思いが、コンセプトが、ほんの少しだけ、チラッと、見えたような気がする。(つづく)