はしご酒(Aくんのアトリエ) その八百と六十一
「エクステ?」
「だけど、ナニかが引っ掛かる」、とAくん。
引っ掛かる?、引っ掛かる、引っ掛かっている、私も、間違いなく。
「ヘンリー・フォードのあの言葉の、あの、『間違った行動』が、もし、取り返しのつかないレベルの悪魔の所業であったとしたら、そんな呑気なことを宣っている場合じゃなくなるんじゃねえか、ってな」
そう、ソレだ。
いくら千載一遇のチャンスであろうと、チャンスの前髪であろうと、そんな悪魔の所業に、賛同することに、手を貸すことに、片棒を担ぐことに、繋がってしまうとしたら、ヘンリー・フォードも、きっと、『決断してしまったことは、時として、躊躇した行動より質(タチ)が悪い』と宣うに違いない。
「たとえば、事故処理方法も最終処分方法も不透明なままの原発推進やら、緊急事態条項やら、スパイ防止法やら、敵基地攻撃能力やら、辺野古移設やら、様々な不正の隠蔽やら居直りやら、に、目を瞑り、ソレはソレ、コレはコレ、ココは仲良く手を取り合って参ろうぞ。なんてコトを、もし、やらかそうとしているのだとしたら、まず、その女神の前髪は、付け毛。そう、『チャンスの前髪』という名の hair extension(ヘヤーエクステンション)、エクステだということだ」
エ、エクステ!?、エクステ、か~。
エクステを利用されておられる方々にナンの恨みもないけれど、そのチャンスの前髪だけは地毛であってほしい。というか、地毛でなければならないと強く思う。
「今、問われているコトは、降って湧いたように天上から舞い降りてきた千載一遇のチャンスのその前髪が、地毛なのかエクステなのかを、見抜ける目を、眼力を、あなた方はお持ちなのか、ということなのでしょうね」
「僕たち一般ピーポーには、そんな眼力、到底、持ち合わすことなんてできねえが、あの人たちには、どうしても、期待しちまうよな」
期待してしまう。
というか、ナニがナンでも、意地でも持ち合わせていてほしい。
(つづく)