はしご酒(Aくんのアトリエ) その八百と五十六
「ヨッテ タカッテ ホクソエム」
弱者たちの悲劇。
強者たちに好都合な悲劇。むしろ、喜劇。
たとえば、事実かもしれない、どころか、事実である可能性が高い、上層部の悪行を訴えたことで追い詰められ自ら命を、という悲劇。この悲劇もまた、追い詰めた側にとっては、喜劇、か。己に非があったから死を選んだのだ、哀れなヤツ、みたいなストーリーをつくり上げ、寄って集(タカ)って北叟(ホクソ)笑む。
もちろん、違法行為である。
もちろん、真っ当な第三者によるクールな検証を行わずに通報者を追い詰めた「側」が、で、ある。
にもかかわらず、そう簡単には亡くなられた方の名誉は回復されない。弱者の名誉など、強者からしてみれば取るに足らない「屁(ヘ)」のようなモノなのかもしれない。
「ナゼ、内部の悪行を、不正を、訴えた、公益通報者は守られないのでしょう」
「ソレが、公益に繋がるかもしれないコトであるにもかかわらず、どうして、弱者は、いつだって、追い詰められ、切り捨てられがちなのか。おそらく、未だ、この国は、先進国ではないというコトなんだろうよ」
先進国ではない、か~。
「お上に逆らうは非国民。売国奴。コイツもまた、見事なまでの『刷り込み』なのかもしれねえぜ」
うわ~、もの凄い刷り込みだな。
あっ。
そういえば、この国においても、江戸時代、重税に苦しむ農民たちのために直訴したがために、本人のみならず家族まで首を刎(ハ)ねられた、みたいな話を耳にしたことがある。ソレから随分と時は流れたが、残念ながら、未だ、モノ申す弱者は、無礼者。非国民。売国奴。なのかもしれない。
だから、私たちは弱者ではない。
だから、弱者なんかであってはならない。
と、己に言い聞かせているのか。
そして、弱者たちは、差別的な意味でより下へ下へと、より弱者へ弱者へと、憎悪のその矛先を向ける。という、悲劇。も、また、あの人たちにとっては好都合な悲劇。つまり、ウハウハの喜劇、か。(つづく)