はしご酒(Aくんのアトリエ) その八百と五十
「アホガ アホヨブ ヘイワボケ?」
「そんなアホがアホ呼ぶアホアホワールドに生きるピーポーたちが陥りがちな心の有りよう、ソレが」
ん?
「平和ボケ」
「へ、平和ボケ、ですか」
「そう。もちろん平和の、平和を守ることの、定義はサマザマ。ヤヤもすると、どうしても、だから富国強兵。だから敵基地攻撃能力。だから非核三原則破棄。だから、欲しがりません勝つまでは。みたいなコトにだってスルスルと」
「なりがちですよね」
「そう、なりがち。たとえば、圧倒的にミサイルが足りない、ってな」
んん?、ミサイル!?
「あたかも、もっと、もっと、ミサイルが装備さえできれば『平和』は守れる、勝ち取れる、かのような迷言。虚言。戯言(タワゴト)。が、大手を振って罷り通る。むしろ、コッチだろ、恐るべき平和ボケは」
ミサイルごときで平和は守れる、勝ち取れる、などとマジで思ってしまうコトこそが、平和ボケ、か~。
「アレだけの数の原発をバカみたいにつくりまくっておいて、ミサイルだぜ、ミサイル。どうやって守るんだ。平和ボケもいいところだろ、違うかい」
違わない。
「いったい、何基、装備すれば、その平和ってヤツが守れると、勝ち取れると、思ってるんだろうな」
んん、ん~。
あの人たちは、本気でそんなコトを思っているのだろうか。
「ひょっとしたら、『一家に一基、ミサイル装備』なんて国防啓発ポスターまでお目見えするかもしれねえぜ」
あり得ない。
い、いや、「一家に一口、ミサイル装備税」なら、充分にあり得るか。
いやいやいや。
そもそも、あの人たちは、平和のためになどと微塵も思ってはいない。
「ドコまでいっても永遠に、ミサイルと平和は繋がらない。繋がるはずがない」
たまらず、つい、ポロッと。
「おっ」
「すみません」
「謝らなくてもいい。そう僕も思う。が、ところがどっこい、あの人たちは、粘り強い地道なdiplomatic power(ディプロマティックパワー)、つまり外交力、ではなくて、圧倒的なmilitary power(ミリタリーパワー)こそが平和に繋がる真の力だと宣う」
「平和に繋がるなんて、きっと思っていない」
「おっ」
「す、すみません」
ナゼか妙に強気になって、さらにポロッと。
「謝らなくていいって。と、なるとだ。またまたカネ絡みやら外圧絡みやらによる、あの、致し方なし、って、ヤツか」
「そうです。その、『致し方なし』ってヤツ、だと思います」
「ま、本気で平和に繋がると信じている、意地でもそう信じたい、ピーポーたちも、結構いるとは思うが」
「妄想ですよ、そんなの」
「おっ」
「す、す、すみません」
完全に調子に乗ってしまって、さらにさらに、ポロッと。
「いやいや、まったくその通り。妄想。妄想以外のナニモノでもない。そして、その妄想がひた走るその先にあるモノは・・・」
そこまで語って、Aくん、突然、黙りこくり、静かに、グラスに残っていた生マッコリをグビリと呑み干す。(つづく)